『プライバシーなんていらない!?』を読み終えました。

最近あたたかかくなってきましたが、みなさんはどうお過ごしでしょうか?

私は司法試験の勉強をしながら、本を読んだりしています。

今週はダニエル・J・ソロブ著『プライバシーなんていらない!?』(勁草書房)を読み終えました。ですので、感想を書いていきます。

 

プライバシーなんていらない!?

プライバシーなんていらない!?

 

 

 

1.本の概要

 この本は、アメリカの法学者ソロブが、アメリカ合衆国憲法修正4条のプライバシーの規定を軸に

①我々はいかにプライバシーと安全の価値を評価し衡量すべきか

②法はいかに国家安全保障の問題を扱うべきか

③(アメリカ合衆国)憲法はいかにプライバシーを保護すべきか

④法はいかに変化していく技術に対応すべきか

という四つの問いに回答していく作品です。

 

あと、この本は、『これからの正義の話をしよう』と同様に、一般の読者向けの内容になっています。

2.感想

 この本を読み、日本国憲法13条、35条で保障されるプライバシーとは何か、という点について、知らないことを知れるようになれたのではないかと思います。これまで、プライバシーの問題は自身の持つ私的領域に侵入されない権利(つまり、のぞきや、監視をされない権利)に限られると思っていたので、著者のように、①情報収集(監視など)、②情報処理(データベース作成など)、③情報拡散(秘密情報開示など)、④侵襲(自宅への侵入行為など)の4つの分類にプライバシーの領域に分けて検討するという視点(p239)は新鮮でした。私は、憲法や、刑事訴訟法の問題を解くときにこのような視点から試験の答案を書いたことがなかったので、反映させる機会があったら、反映させてみたいです。

 また、この4つの視点から、最近のマイナンバー法の問題(情報収集、情報処理の問題)を考えてみると、強制的に銀行預金口座の金額が知られてしまうことに情報収集の問題があり、これをもとにして国民の税金の取り立て、ツタヤポイントの交付を行うことに適切な情報処理の問題があることがあることがわかります。これらの問題を解消するために例えば、国民が開示しない情報の範囲を定める制度を作ったり、収集した情報を日本政府以外の第三者に公開しない制度を作ることによりプライバシー侵害の問題を回避できることになるのではないかと考えました。

 最後に、これらの議論はアメリカのものであるため、日本には関係ないと考えないようにしてもらいたいです。日本にも、アメリカにもプライバシーの観念はあり、プライバシーの議論は国家に関係のない普遍的な議論だからです。僕は、大学でよく何の根拠もなしに日本とアメリカは違うからこの議論が違ってもよいということをよく耳にしていました。これは、他国の制度や、普遍的な原理(人間らしさとは何かという問い)に耳を貸さない者の発言であると考えているからです。

 ですので、アメリカのプライバシーに関する議論、日本のプライバシー保護法制やプライバシー保護政策に関わりたい方はぜひこの本を読み、プライバシーの在り方について考えてもらいたいです。

 

プライバシーなんていらない!?

プライバシーなんていらない!?