刑事訴訟法について解決したことの報告

先週刑事訴訟法で悩んでいる点についての記事を書きましたが、その点について解決したので報告させていただきます。

 

刑事訴訟法判例百選 第10版〈別冊ジュリスト232号〉

刑事訴訟法判例百選 第10版〈別冊ジュリスト232号〉

 

 

 ①の点について

 前回判例百選の17事件を読み、

 一罪にあたるため、一罪一逮捕一勾留の原則が妥当すること

 ⇒再逮捕再勾留の可否、さらに、この際逮捕再勾留の要件の中で同時処理可能性を論じる。

 の順に検討しているように読めます。

と書きましたが、どうやら私が読み間違いをしていたようです。

 判例百選には以下のように書かれています。

 「本件常習賭博は前記基礎にかかる常習賭博と一罪をなすものであり、その逮捕勾留中に同時に捜査を遂げる可能性が存したのである。」と認定し、「したがって本件逮捕勾留は、同時処理の可能性のある常習一罪の一部についての逮捕勾留であるから、一罪一勾留の原則を適用すべきである。」と判示しています。

 

つまり、前回の記事の後者の見解が判例の読み方として正しく、この見解は判例の説としては適当でなかったようです。

 

では、次に同時処理の原則はどのような位置づけとなるのかという点ですが、原則として逮捕勾留については、一罪一逮捕一勾留の原則が適用され、この一罪とは実体法上一罪(観念的競合、牽連犯など、罪数を基準にして、複数の犯罪の構成要件に該当する行為であっても一罪として扱う犯罪を一罪として扱う見解)を指し、この一罪の一定の場合の例外として位置づけられるようです。

 

 この実体法上一罪説の例外と、この実体法上一罪説の例外としての同時処理可能性については、古江頼隆『事例演習刑事訴訟法〔第2版〕』(有斐閣)79頁に詳しく書かれてます。

 

事例演習刑事訴訟法 第2版 (法学教室ライブラリィ)

事例演習刑事訴訟法 第2版 (法学教室ライブラリィ)

 

 

 

②の点について、

 任意同行と任意取り調べについて2つの処分は異なるものであるためそれぞれを同一の処分として扱うべきではないのではないかとも考えたのですが、この任意同行と任意の取り調べについては刑事訴訟法198条に規定されている処分であるため、異なる処分として考える必要はなく、互いに関連したもの(あるいは同一のもの)として考えられているようです。

 

 このことは小田健司「任意同行と逮捕の始期」新関雅夫ほか『増補 令状基本問題 上』(判例時報社)130頁に書かれています。

 

増補 令状基本問題〈上〉

増補 令状基本問題〈上〉

 

 

 

 前回の記事で書いた疑問点について解決できてよかったです。読み間違いや、勘違いなどがありましたが、何とかこの辺りまで理解できました。もしかしたら、まだ間違い等はあるかもしれませんが、そのときには記事にしていきます。

 また、ツイッター上でコメントをくれた彩さんには感謝しています。ツイッターでのコメントには助けられました。