ロープラクティス商法 事例10

今回の内容は、株主平等原則に関するものです。

株主平等原則に関する最近の判例として会社法109条2項に関する判例が、平成29年度重要判例解説 (ジュリスト臨時増刊)に書かれていますので、興味があれば読んでみてください。

  

Law Practice 商法〔第3版〕

Law Practice 商法〔第3版〕

 

 

 

 

下書き

設問(1

大株主による多数決の濫用や、経営陣の専横から少数株主を保護するために、会社法1091項に反する行為は無効であると判断される。

株主平等原則の内容は、

①株主を持ち株数に応じて取り扱わなければならないこと

②一定の場合には、会社は持ち株数にかかわりなく株主を平等に扱わなければならないこと

を指す。

→大株主であるXに対して、1か月8万円、毎年二回の中元、歳暮の時に5万円支払う契約は、株主の中で、Xのみを特別に有利に扱う契約であるため、株主を持ち株に応じて取り扱っておらず、また、このようなXとのみの契約を結ぶことはできないにもかかわらずXにのみこのような契約を行っているため、株主平等原則の①にも、②にも反している。

設問(2)

先述の通り、株主平等原則に反する株主との間の契約の効力は無効である。

株主優待についても、株主平等に反する契約となっている場合、株主平等原則に反し無効となる場合がある。

→すべての株主に株主優待として、商品券が与えられる点は、②の内容に反していないといえる。

 しかし、持ち株比率に応じて、分配される商品券の額の内容を検討してみると、その比率は、1000株までは、1株当たり0.05円であり、200万株から、1株あたり、0.5円として扱われ、10倍の差が出るようになっている。

つまり、持ち株数が多い株主が有利に扱われ、持ち株数が少ない株主が著しく不利に扱われる内容となっている。そのため、①の内容に反しているといえる。

 

解答

設問(1)

1会社法1091項に反する契約は、大株主による多数決の濫用や、経営陣の専横から少数株主を保護するために、無効となると考えられている。この会社法1091項の原則に反する場合とは、①株主を持ち株に応じて取り扱わなかった場合や、②合理的な理由がなく株主としての地位とかかわりなく不平等扱いをする場合を指す。

 本件事案において、XYとの間で、YXに対して、1か月8万円毎年2回中元及び歳末に5万円を支払う契約を締約している。この契約は、XYとの間のみで結ばれた契約であるため、株主を持ち株に応じて取り扱っておらず、合理的な理由なく株主の地位とはかかわりのない不平等扱いを設けているということができる。そのため、会社法1091項の原則に反する場合とされる①と、②の両方場合に当たるといえる。

2.そのため、本件契約は、会社法1091項に反する場合に当たるといえ、無効であるということができる。XYに対して、本件契約に基づき、金員を支払うことを請求することはできない。

設問(2)

1会社法1091項の株主平等原則は株主優待制度にも適用される。そのため、会社法1091項に反する株主優待制度であるといえる場合には、その株主優待制度の内容である契約に基づいて、株主優待に基づく景品の請求をすることはできない。

 本件事案において、Y社は株主優待制度として、歳末にすべての株主に対して、商品券を贈与することを定めているが、その比率は、1000株以上を有している株主に対しては、50円の商品券を交付し、200万株以上を有する株主に対しては、100万円の商品券を交付することを定めている。この内容は、100株以上の株主に対しては、1株あたり、0.05円の商品券を交付することとなり、200万株以上の株主に対しては、1株あたり0.5円商品券を交付する内容となっており、株主間で10倍以上の差がつくこととなっている。このことから、その比率が、大株主にとって著しく有利となっており、株主の持ち株比率に応じて扱っていないということができるため、株主平等原則の内容である①に反しているということができる。

2.したがって、Y社の株主優待制度は会社法1091項に反して無効ということができ、XYに対して、Y株主優待制度に基づき100万円の商品券を引き渡すよう請求できない。