刑法事例演習教材 事例25

今回の問題は、正直正解がわかりませんでした。

解説では、この問題について恐喝罪で検討してほしいようでしたが、僕としては、恐喝ではなく強盗と評価できるのではないかと考えています。

ほかにも共犯からの離脱、同時傷害の特例など、書くべき事項はあるのですが、これでいいのかわかりません。

こう書けばいいのではないかということはコメントにお願いします

 

刑法事例演習教材 第2版

刑法事例演習教材 第2版

 

 

 第一.暴行

1.刑法60条により共同正犯が成立するためには、共同して犯罪を実行したといえなければならない。また、共謀共同正犯が成立するためには、複数人が謀議し、謀議の計画に従って各人が犯罪を実行したといえなければならない。

 本件事案において、甲、乙、ABはワゴン車内でDに暴行を振るって制裁を加えた上、うまくいけば、Dに慰謝料を支払わせるとの謀議をし、その謀議に基づいて甲、乙、ABDに対して暴力を加えているため、甲、乙、ABは刑法60条の共同正犯としての罪責を負う。

2.刑法204条の傷害罪が成立するためには、人の身体を傷害したといえなければならないところ、甲らは、第一暴行を加え、②の傷害を負わせているため、甲らは傷害罪に該当する行為を行ったということができる。

 また、刑法207条によれば、複数人で時間的、場所的に近接したところで暴行を加えたところ、原因不明の傷害が生じた場合、その傷害の原因が特定できない場合、傷害行為によるものとされる。

 本件事案において、第一暴行から②の障害が生じたことは明らかであるものの、①の傷害は第一暴行によるものか、第二暴行によるものか不明となっている。しかし、第二暴行の行われた場所であるF岸壁は、E公園から15キロメートルも離れた場所で到着には、20分程度かかることから、F岸壁とE公園は、時間的にも場所的にも同一の場所であるということはできない。

 したがって、甲らは第一暴行により②の傷害を負わせたものとして刑法204条の傷害罪の共同正犯としての罪責を負う。

第二.第二暴行

1.刑法60条により共同正犯として処罰されるのは、犯罪の結果実現の因果に関与したためであるとされる。そのため、犯罪の実行の途中で因果性を有しなくなった場合、その時点以降の犯罪についての罪責を負わないことになる。

(1)まず、甲は第一暴行が終わった後、帰宅しているが、甲はDへの暴力を振るうことの計画について当初から計画していた者であり、計画を翻したり、これ以上の犯罪の結果が発生しないようにするために予防する措置を採ったとも認められないため、甲の関与による因果は甲の帰宅時点で切れていないということができる。

 したがって、甲は第二暴行についての罪責を負う

(2)次に乙は、第一暴行の後Aか顔面を殴打されたことにより気を失っているが、乙もDへ暴力を振るうことについて計画した者であり、気絶させられて以降も未だに計画に関与したことによる因果性は残存しているため、Aによって気絶させられただけでは第二暴行までの因果性が切断されたということはできない。

(3)したがって、甲、乙は第二暴行についても刑法60条の共同正犯としての罪責を負う。

2.刑法2361項の強盗罪が成立するためには相手方の犯行を抑圧する程度の暴行を行い、不法領得の意思の下、財物の占有を不法に移転させたといえなければならない。

 本件事案において、Aは第二暴行を加えDを脅えきらせているため、相手方の犯行を抑圧したということができる。

 また、これにより、Dから10万円を慰謝料として受け取っているため、他人であるDの財物の占有を不法に移転させたということができる。

 したがってAらは、刑法2361項の強盗罪の共同正犯としての罪責を負う。

第三.罪数

      したがって甲、乙は傷害罪の共同正犯と、強盗罪の共同正犯としての罪責を負い、刑法45条により併合罪となる。