司法試験平成29年憲法

司法試験憲法の問題を解いてみました。

適正手続きに関して、判例通りに書けたか怪しい部分などありますが、コメントで、間違いや、書き方のおかしな点を指摘していただけると幸いです。

 

 

司法試験論文全過去問集〈1〉公法系憲法

司法試験論文全過去問集〈1〉公法系憲法

 

 

 

設問1

第一、自己決定権に対する制約を理由とするもの

1.甲は、法158号の禁止事項の規定が憲法13条により保障される自己決定権を侵害する違憲無効な法律であると主張する。

2憲法13条は、個人の自由を保障しており、とくに私的領域に関する事柄については、最大限に保障している。一方私的領域に関わらない自由についても、公共の福祉に反しない限り保障されると規定されている。妊娠出産に関する自己決定権というものは、個人の家族にかかわる事柄であり、その性質上、私的領域に関する権利であるということができる。

 そのため、妊娠出産に関する自己決定権というものは、最大限に保障されなければならないものということができる。

3憲法上の権利については、その性質に反しない限り、外国人にも保障されているとされる。これについて、在留資格によって本国に滞在する外国人である場合、外国人の自由を消極的理由として、在留資格に対する判断をされない利益までは含まれないとされている。

 妊娠出産の自由というものは、女性であれば、国籍の有無関係なく有している権利であり、外国人であることを理由として、憲法上の権利として保障すべきでないという理由はどこにもない。また、法158号の禁止事項は妊娠・出産を積極的理由として在留資格を失わせる事由として規定しているものであるため、マクリーン事件のように消極的事由として在留資格の再度の延長を行った判決と同様の判断にはならない。

4.そのため、外国人の妊娠出産を積極的理由として、在留資格を否定するためには、妊娠出産に関する自己決定権を制約しなければならないほどのやむに已まれぬ必要があり、その立法が必要最小限度のものであるといえなければならない。

5.法158号において、滞在中の妊娠出産を認めていないのは、日本への長期にわたる定住を認めないためであること、法による在留資格で入国した外国人に在留資格を認めると、社会保障制度に影響を及ぼす可能性があることを理由としているものの、定住を許さない趣旨のものであっても、出産のための在留資格を認めたり、妊娠出産を理由としないことが考えられる。また、日本への定住を認めないことも、社会保障制度への影響も専ら公益に関わるものであり、やむに已まれぬ必要性としては不十分であるということができる。また、妊娠出産を国外退去事由とすることも、定住を認めないための政策として必要最小限のものということいえず、また、社会保障制度の影響を防止することも、租税等の立法措置を講じるべきことができることがらであり、個人に国外退去事由とすることには必要最小限の制約があるということはできない。

6.したがって、法158号の規定は、憲法13条に違反した違憲無効な立法であるということができる。

第二.手続保障を理由とするもの

1憲法33条は、逮捕される場合として、現行犯を除いて、裁判官の発する令状がなければならないことを規定している。この憲法33条は、刑事手続を主に想定しているものの、刑事手続に類似する行政活動についてもその保証が及んでいると解される。

 また、この適正手続きに関する立法についてもその性質上、外国人に保障が及んでいるため、日本国民と同等に憲法33条の憲法上の権利が保障されている。

2.法18条によれば、警備官は法15条に該当する事実があると疑うに足りる相当な事由がある場合、その裁量で、無令状で嫌疑者の身体を拘束し、収容することができるとされている。このように身体の拘束を行い、一定の収容施設で身体の自由を一定期間奪うことは、最早刑事手続と同様の処分であり、憲法33条に規定されるように裁判官の発する令状がなければならない。しかし、法18条は無令状の新大綱を区を予定しており、令状に関する規定はない。

 そのため、法18条は憲法33条に違反する立法であり、違憲無効であるということができる。

第三.結論

 よって、Bに対する身体拘束及び国外退去は違法であり、Bは国に対して、国家賠償法11項に基づく損害賠償請求を行うことができる。

設問2

第一.憲法13条を理由とする主張について

1憲法13条は個人の自由を保障し、とくに、私的領域に関する事柄については最大限保証している。

 しかし、この自由というものは外国人の在留資格の範囲内で認められているものであることから、一定程度の合理的制約に服するということができる。法158号は在留資格を認めない禁止事項として、妊娠出産を理由としてこの規定に違反した場合に国外退去を命じるという重大な制約を課す立法を行っている。

 そのため、その立法を行うためには必要かつ合理的な最小限度の立法であることが認められなければならない。

2.法158号が外国人の禁止行為として妊娠・出産を挙げるのは、法に基づいて在留が認められた外国人の定住を禁止することと、社会保障制度の変更を防止することを理由としている。しかし、外国人の定住を認めてはならない必要というものはなく、また、社会保障制度の変更というものも立法政策に関する事柄であり、税制などで解決可能なものであり、妊娠出産をした外国人を退去させなければ解決できない事柄ではない。

 したがって、法158号の規定は、必要かつ、合理的内最小限度の立法であるということはできず、憲法13条に違反する立法であるということができる。

第二.適正手続きの主張について

1憲法33条は、現行犯人として逮捕される場合を除いて裁判官の発する令状なく逮捕されないことを規定しているが、この規定は、刑事手続を主として想定している。しかし、刑事手続と結びつく行政手続きについても憲法33条の保障が及んでおり、そのような行政手続きについても令状が必要とされる。

2.法18条に基づく身体の拘束というものは刑事手続を予定したものではなく、法に基づく行政処分としての強制退去手続きの執行を実行的に行うことを目的とした規定である。また、法15条に違反した場合についての刑事処分が予定されていない子をから、法18条に基づく処分は刑事手続と直接結びつくものではないということができる。

 したがって法18条に基づく処分には憲法33条に基づく保証が及んでおらず、合憲であるということができる。

以上