平成25年知的財産法 第二問

平成25年知的財産法第二問を書いていきます。

 

著作権判例百選 第6版 (別冊ジュリスト 242)

著作権判例百選 第6版 (別冊ジュリスト 242)

  • 発売日: 2019/03/11
  • メディア: ムック
 

 

 設問1

1.AはCに対して本件アニメが本件小説の著作権を侵害していることを理由として著作権法112条1項に基づき差し止め請求を行おうとしているが、このような請求が認められるか検討する。

(1)著作権法28条によれば、二次的著作物の原著作物の著作者は二次的著作物の著作者が有するものと同一の権利を有しているとされる。二次的著作物に当たるといえるためには、原著作物の本質的特徴を直接感得できる程度に変形し、新たな創作を加えたといえなければならない。

 本件事案における本件漫画は、本件小説を原作としてその物語に沿って漫画化したものであることから、原著作物の本質的特徴を直接感得できる程度に変形しているといえる。また、本件漫画は本件小説に言語で書かれている特徴を踏まえながら漫画として描くのにふさわしいキャラクターを描くことによって創作を加えているといえる。

 したがって、本件漫画は本件小説の二次的著作物であるということができる。

(2)著作権侵害が認められるためには、依拠性、類似性、法定利用行為が存在したといえなければならない。

 本件アニメは本件漫画を題材としているため、依拠性が認められる。また、本件漫画のキャラクターの作画を忠実にアニメ化しているため、本件漫画との類似性が認められる。

 また、著作権法27条の翻案権侵害があったといえるためには、著作物の本質的特徴を直接感得できる程度に変形を行ったといえなければならないところ、本件アニメは本件漫画の作画を忠実に再現することによって作成されているため、著作物の本質的特徴を直接感得することができる程度に変形を行っているということができる。

 さらに、著作権法20条の同一性保持権侵害があったといえるためには、著作者の意思に反する改変が行われているといえなければならない。本件事案においてCはAの許可を取らずにアニメ化を行っているため、著作者の意思に反する経変が行われたということができる。

(3)したがってAはCに対して翻案権侵害、同一性保持権侵害を理由として著作権法112条1項に基づいて差し止め請求を行うことができる。

2.これに対してCはAは二次的著作物である本件漫画の著作権を行使することはできないと主張することが考えられるものの、著作権法28条によれば、このような著作権の行使は認められるため、Cの反論は認められない。

設問2

1.Dは本件イベントの際に本件パンフレットにαが描かれた本件漫画の原画一枚を掲載しているが、これに対してA,Bが本件漫画の著作権を侵害していることを理由として差し止め請求を行うことができるか検討する。

(1)著作権侵害を理由として差し止め請求を行うためには、依拠性、類似性、法定利用行為が存在しなければならない。

 本件パンフレットに載っている原画は本件漫画のものであるため、依拠性も類似性も認められる。

 また、パンフレットに原画を乗せるという有形的再製を行うことによって著作権法21条の複製権を、原画のサイズの縮小を行うことによって著作物の変形を行うことによって著作権法27条の翻案権を、著作者の意に反する改変を行うことによって著作権法20条の同一性保持権を侵害している。

(2)そのため、ABはDに対して著作権著作者人格権侵害を理由として、差し止め請求を行うことができる。

2.このABの主張に対してDは著作権著作者人格権の制限を主張することが考えられるため検討する。

(1)著作権法47条1項によれば、美術の著作物の展示の際の解説のための小冊子のために必要と認められる限度において複製を行うことができるとされている。また、著作権法47条の6第2項に基づいて美術の著作物の展示の際に二次的著作物の作成を行うことができるとされている。

 本件事案においてDが本件パンフレットを作製したのは、美術の著作物である本件漫画の原画の解説のためであることから、著作権法47条1項及び47条の6第2項に基づいて著作権の制限を主張することができる。

(2)また、著作権法20条2項4号によれば、やむを得ない改変に当たる場合、同一性保持権の主張は制限されるとされている。

 本件パンフレットを作製したのは本件漫画の原画の解説のためであり、解説のために本件原画の複製物を利用するのはよくあり、やむを得ないものといえるため、著作権法20条2項4号にいうやむを得ない改変に当たるということができる。

(3)したがってDは上記の通り著作権著作者人格権の制限を主張することができる。

3.ABは本件チケットに本件漫画の原画が利用されていることを理由として差し止め請求を行おうとしているが、このような請求が認められるか検討する。

(1)著作権侵害があるといえるためには依拠性、類似性、法定利用行為が存在しなければならない。

 本件事案において、Dは本件漫画の原画をチケットに印刷することによって複製権侵害を行っているため、著作権法21条の複製権侵害による著作権侵害があったということができる。

4.これに対して、Dは著作権法47条1項の著作権の制限を主張することが考えられるものの、これは美術の著作物の解説の小冊子に当たらないため、Dは著作権の制限を主張できない。

5.したがって本件パンフレットについて、ABは差し止め請求をすることはできないが、本件チケットについてABは差し止め請求を行うことができる。

設問3

1.まず、BがFに対して著作権侵害を理由として差し止め請求を行うことができるか検討する。

(1)Bは本件漫画の著作者であるため、本件漫画に新たな創作を加えた範囲について二次的著作物の著作権を有している。

 著作権侵害があったといえるためには、依拠性、類似性、法定利用行為が認められなければならない。本件事案においてFは本件漫画のキャラクターを模した本件フィギュアを細部まで模したプラスチック人形を作っているため、本件漫画に依拠して、類似性の認められる程度に翻案したということができる。

(2)そのため、BはFに対して著作権侵害を理由として差し止め請求を行うことができる。

2.次にEがFに対して著作権侵害を理由として差し止め請求を行うことができるか検討する。

(1)まず、本件フィギュアについて著作権法2条1項1号の著作物性が認められなければならない。本件フィギュアは応用美術に当たるため、実用部分から分離された部分について創作性が認められなければならない。

 本件フィギュアに関するもののうち、本件漫画と同じ部分については、創作が加わっていないことから、創作性は認められないものの、本件フィギュアは本件漫画では十分に描かれていない前後左右から見たαの容姿を新たに創作しているため、実用部分と分離された部分について創作が加わったといえる。

 したがって本件フィギュアに著作権法2条1項1号の著作物性が認められる。

(2)また、Fの作成したプラスチック人形はEのフィギュアを忠実に再現しているため、著作権法21条の複製権侵害を行ったということができる。

(3)よってEはFに対して著作権法112条1項に基づいて差し止め請求を行うことができる。

3.これに対して、Fは著作権の制限や類似性が否定されることを主張することが考えられるものの、Fの主張に合いそうな制限規定はなく、先述の通り類似性は認められることから、Fの反論は認められない。

以上