平成25年司法試験行政法

司法試験行政法を解いていきます

 

 

 設問1

1.処分性

 行政事件訴訟法3条2項の取り消し処分の対象となる処分に該当するためには、法律に基づき、直接相手方の権利義務又は地位の変更を一方的にもたらすものであるということができなければならない。

 本件事案において、C県知事は本件組合に対して法39条1項に基づき本件認可を行っている。この本件組合というものは、法14条に基づき設立される組織であり、都道府県の行政機関とは異なって法人格を与えられる。そのため、Cの主張するようにC県の下級行政機関に対する行為ということはできない。そのため、行政機関内部の行為ではなく、法律に基づいて相手方に対してなされる行為であるということができる。

  また、処分性が認められるためには権利義務又は法律上の地位の変動がなければならないが、法39条1項によれば、都道府県知事の認可を受けることによって定款変更を行うことができるとされているため、法39条1項により、定款変更を行うことのできる地位が与えられるということができる。

 これに対してC県は市町村が土地区画整理事業を行う場合には定款ではなく施行規定を条例で定めることとされていることから、条例制定行為と同視でき、処分性が認められないと反論している。しかし、このC県の法52条1項に基づく主張は土地区画整理事業を行うことができるかどうかという地位にかかわるものであり、土地区画整理組合が賦課金の徴収をどのように行うかということなどにかかわりがないそのため、Cの主張する条例制定行為と同様に何らの法効果ももたらさないという主張は認められない。

 また、法39条1項によってCは一方的に本件組合に対して、許可を与えることができるのであるから、権力性も認められる。

2.したがって、法39条1項に基づく本件処分には処分性が認められ、取り消し訴訟の対象となる。

設問2

 1.法39条2項によれば、本件認可が与えられるためには、法21条1項の要件を満たさなければならないとされており、法21条1項4号によれば、土地区画整理事業を施行するために必要な経済的基盤及びこれを的確に施工するために必要なその他の能力が十分になければならないとされている。

 このように土地区画整理事業を十分に実施することができるかどうかという観点から行われるのであることから、土地区画整理組合の個別事情や対象となる地域の地価の算定等を総合的に考慮して政策的な判断を下さなければならないことから、法21条1項4号の要件を満たすか否かについての判断に都道府県知事の裁量が認められる。

 そのため、本件認可が法21条1項4号に違反しているといえるためには、前提となる事実について重要な事実誤認があるか、考慮すべき事項を考慮せず若しくは考慮すべきでない事項を過度に重視して社会通念上相当とされない判断を下し裁量権の範囲を逸脱したということがいえなければならない。

 本件事案において、C県はバブル経済期の地価を見て資金計画を立てているが、2012年時点において、地価はバブル経済期と比べて地価は低下しており、バブル経済期と同様の基準で判断することはできない状態にある。にもかかわらず、新たな地価を算定し、新たな土地区画整理計画を立てることなく行われた本件定款変更は地価の算定義務を怠り事実誤認をしたということが認められる。これによって社会通念上相当とされない判断を下していることから、本件認可には裁量権の範囲を逸脱した違法があるということができる。

 したがって、本件認可は法39条2項に違反し違法であるということができる。

2.次に、本件定款変更が31条に基づかずに行われたことの違法性を主張することが考えられるため検討する。

 法31条1号によれば、定款の変更を行うためには総会の議決がなければならないとされる。その議決権の行使について法38条3項によれば、書面又は代理人によって行使できるとされているのであるから、Aが主張するように書面での議決権行使を行ったことが違法であるということはできない。

 したがって、この点について法31条1号の違法はない。

3.さらに、Aは賦課金の算定方法が不公平であることを理由として違法主張を行っている。

 法40条2項によれば、賦課金の額の算定は公平に定めなければならないとされている。また、法39条2項の準用する法21条1項2号によれば、定款又は事業計画の手続又は内容が法令に違反していないことが要件とされている。このことから、法39条に基づき本件認可を行うためには法40条2項の要件を満たす必要があるといえる。

 さらに、法40条2項にいう公平であるかどうかは、土地などの個別事情を考慮せねばならないことから、判断は都道府県知事に任せられているということができ、都道府県知事に裁量権が認められる。

 そのため、違法であるか否かは都道府県知事が裁量権の範囲を逸脱し社会通念上相当とされない判断を下したかによって判断される。本件認可を行うにあたって、C県知事は本件組合の組合員一人当たりの地積が482平方メートルであることから300平方メートル以下の地積しか有しないものに対して賦課金の免除を行ったのであるが、300平方メートル以下の地積しか有しないものは全体の80パーセントを占めており、免除対象者が多数となる状態にあるということができる。そのため、残りの者に対して賦課金の負担が重くなり公平とは言えない状態にあるといえる。

 したがって、前提となる事実について事実誤認がありC県知事は社会通念上相当とされない判断を行い裁量権の範囲を逸脱したということができるため、法39条1項に反した違法があるということができる。

 これに対して、C県は賦課金の算定方法が本件認可の違法性を基礎づけないと主張するものの、これは、法39条の準用する法21条2号の解釈を誤ったものであるということができるため、妥当でない。

 したがってAは賦課金の算定方法についての違法があることを理由として本件認可が法39条2項に違反することを主張することができる。

 

以上