ロープラクティス商法 事例④

前回解答例を挙げたところ、ツイッターからのアクセスが上昇したので、多くの方に見ていただけたので、続きを上げていきます。

 

Law Practice 商法〔第3版〕

Law Practice 商法〔第3版〕

 

 

 

以下のように考えた

 会社法52条1項によれば、現物出資財産の価額が、定款に記載された価額より著しく低い場合には、発起に及び設立時取締役は株式会社に対して、不足分額を支払う義務を負うとされる。

 ただし、会社法52条2項2号によれば、設立時取締役が、職務を行うについて、注意を怠らなかった場合には不足遺文を支払う義務はないとされる。

 もっとも、現物出資財産の給付をした取締役は責任の免除の客体から除かれている。

 →本件では、Y3の給付した土地は定款記載の価額より著しく不足している。

  そのため、設立時取締役のY1,Y2,Y3が不足分の価額の支払い義務を負う。

  Y1,Y2については、会社法522項の責任免除の対象となるものの、Y3と謀ってY3の現物出資財産を受け入れているため、会社法52条によって、免責されない。

 

 また、会社法52条3項によれば、定款に記載された現物出資財産の価額が相当であることを証明した会社法33条10項3号に記載された者は不足分額を支払う義務を負うとされる。

 ただし、会社法52条3項但し書きによれば、証明をすることについて注意を怠らなかった場合には不足分額の支払い義務を負わない。

 →本件では、Y4の弁護士、,Y5不動産鑑定士会社法33条に不動産の場合には、括弧書きに不動産鑑定士も現物出資財産の価額について、相当であるとの判断をすることができるとされている。)が、会社法33103号により責任を負う者とされる。

 また、本件では、Y5不動産鑑定士であるにもかかわらず、不動産市況を反映させずに、Y3の現物出資財産の価額を相当であると判断しているため、注意を怠らなかったとは言えない。

 本件では、Y4の責任は判断しにくい。しかし、安易に相当である旨の判断をしていることから、注意を怠らなかったとは言えない(自分はそう考えたが、恐らくそうでない判断をすることもできる)。

 

そのため、以下のように書いた

1.Y1,Y2,Y3の責任

 (1)会社の資本の充実を図るため、会社法52条1項によれば、発起人が株式会社の設立の際に、出資した現物出資財産の価額が、定款に記載された価額に著しく不足する場合、発起人は株式会社に対して不足額を支払う義務を負うとされる。

 本件事案において、Y3会社法28条2号により2000間年の現物出資財産として、裏六甲の山荘を出資している。しかし、この裏六甲の山荘は100間年の価値しかなく、定款に記載された価額に著しく不足している。そのため、設立時取締役のY1,Y2,Y3会社法52条1項によって責任を負う。

 (2)会社法52条2項2号によれば、設立時取締役が職務を行うについて注意を怠らなかった場合には、不足分の支払いを拒むことができるとされている。ただし、この責任免除には、現物出資財産の給付をした取締役は含まれないとされている。

 本件事案において、Y1,Y2は不動産市況の不振の折からY3の給付した土地は100万円の価値しかないことを知っており、会社の資本額を少しでも大きく見せようと謀るために、Y3の2000万円の現物出資を受け入れている。さらに、Y1,Y2は、設立時取締役として選任された際も、Y3の出資にかかる不動産について不相当でない旨報告している。のことから、Y1,Y2は不相当な不動産価額の評価に関与しているため、職務を行うについて注意を怠らなかったとは言えない。

 (3)したがって、Y1,Y2,Y3会社法521項によりY社に対して不足額を支払う義務を負う。

2Y4,Y5の責任

 (1会社法523項によれば、現物出資財産の価額が定款に記載されていた現物出資財産の価額に著しく不足していた場合には、会社法33103号の規定により、現物出資財産の価額について相当であると証明した者についても不足分額について支払う責任を負うとされる。

 本件事案において、Y4,Y5会社法33103号によって、現物出資財産の価額を相当であると鑑定できる者であり、Y3の出資した財産の価額について相当である旨の鑑定をしている。しかし、実際にはY3の出資した現物出資財産の価額は定款記載の現物出資財産の価額を著しく下回るものであったといえる。

 (2会社法523項但し書きによれば、証明をするにつき、注意を怠らなかった場合には、不足分額について支払う義務を負わないとされる。

 本件事案において、Y5不動産鑑定士であるにもかかわらず、不動産市況からY3の現物出資財産である不動産について定款記載の価額に不足していることが予想できたにもかかわらず、この市況に反して相当である旨の評価をしているため、注意を怠らなかったとは言えない。

 また、Y4も、Y5の評価を安易に信頼し、Y3の現物出資財産の価額について相当である旨の評価をしていることから、注意を怠らなかったとは言えない。

 (3)したがって、Y4,Y5会社法523項に基づき不足分の価額について支払う義務を負う。