この問題は、授業で関連した内容の話があったので注意の部分で書いておきます。
あと、このわたしの解説については、不十分な点があるため、私でも不十分な点を補わなければならないと考えています。
下書き
設問(1)
キャッシュアウト手続きを行うためには、
①会社法108条1項7号・466条・309条2項11号の株主総会決議に基づき、種類株式発行会社への定款変更について、決議を行う。
②会社法108条2項7号・466条・309条2項11号に基づき定款変更により株式を全部取得条項付株式に変更する。
③会社法171条1項、309条2項3号により、全部取得条項付株式を取得する。
という手段で行われる。
この決議は一つの株主総会で行うことができ、これらを行うためには、3分の2以上の株式を有していればよい。
このような手続きが踏まれると、会社株主は、株主としての地位を失い、対価によって処理される。また、この対価が株式である場合で、1株に満たない場合には、金銭によって処理される(会社法234条1項2号)。
この効力を争うためには、株主総会決議の取り消しの訴えを提起しなければならない。
設問(2)
この株主総会決議を取り消す訴えを提起するためには、原告適格がなければならないものの、会社法831条1項後段によれば、取り消しにより株主となる者にも原告適格が認められているため、キャッシュアウトで株主の地位を失うものにも原告適格が認められる。
→したがって、Xにも原告適格が認めらえる。
注意
ロープラの解説部分に解説が書かれていないが、関連しそうなため書いておく
株主総会決議の追認と訴えの利益の関係については、①東京地裁平成27年3月16日判決判時2272号138頁、②東京高裁平成27年3月12日判決金判1469号58頁の判例(アムスク事件)が参考になる。
判例②によれば、「株主総会決議の効力を遡及させることによって法令により保護されている関係者の手続き上の権利利益が害されるときは、その遡及的効力を認めることはできないと解すべきである。」と判断しており、これによって訴えの利益が失われるに至ったということはできないとして、訴えの利益の消滅を認めなかった。
→本件事案で臨時株主総会決議の追認をする決議を行った場合、訴えの利益の消滅を認めることはできない。
答案
設問(1)
1.会社法上、①会社法108条1項7号・466条・309条2項11号の株主総会決議に基づき、種類株式発行会社への定款変更について、決議を行う②会社法108条2項7号・466条・309条2項11号に基づき定款変更により株式を全部取得条項付株式に変更する③会社法171条1項、309条2項3号により、全部取得条項付株式を取得すると三段階の手続きを踏むことにより、会社株式の全部を取得することができる。この手続きは、一度の株主総会により行うことができる。この手続きを行うことにより、株主は全株取得条項付株式の対価に基づき処理される。この時対価として株式を対価とすることができるが、この対価によって一株を下回る場合には、金銭によって処理される(会社法234条1項2号)。
本件事案において、①から③の手続きによりY社株式が全部Aに取得されている。このとき対価として、Y社一株当たりA社株式4万4090分の6の割合で交付すると定めているが、この対価によっても、Y社株式を最も多く有しているXはA社株式を一株も入手できないため、Xは会社法234条1項2号によって金銭によって処理される。この時、XはY社株主としての地位を失う。
2.したがって、Xは取得日にY社株主としての地位を失い、Xには対価が支払われる。
3.この株主総会決議の効力を争うためには、会社法831条に基づき、各株主総会決議の取り消しを求める訴えを提起することになると考えらえる。
設問(2)
次に、Xは会社法831条1項によって、株主総会決議の取り消しを請求できるかを検討する。
会社法831条1項後段によれば、株主総会決議の取り消しによって、株主としての地位を回復できるものは、株主総会決議の取り消しについて原告適格を有するとされているため、Xは会社法831条に基づき株主総会決議の取り消しを請求することができる。