浜田寿美男「虚偽自白を読み解く」(岩波新書)を読みました。

虚偽自白を読み解く (岩波新書)を読みました。この本は、有名な冤罪事件の自白調書と、取り調べの際の録音記録から、無実であるにもかかわらず自白した被疑者の心理的状況このような心理状況に至ってしまう心理状況が説明されています。

そのため、以下感想を書いていきます。

 

虚偽自白を読み解く (岩波新書)

虚偽自白を読み解く (岩波新書)

 

 

  この本の中で、印象に残ったものとしては、取り調べの状況に置かれた被疑者は、自分で犯罪を犯したのでないにもかかわらず、今ある情報の中から、積極的にその犯罪の起こった状況を想像し、迫真性を持った自白調書を作るよう想像し、あたかも自分が犯人であるかのように自白してしまうということです。

 つまり、警察との取り調べの中で、いったん自白してしまうと、その自白に沿ったように事実を語るということです。このように自白してしまうのは、自白してしまった以上その嘘を成るだけ真実のものとするよう心理的な影響が働き、真実のような自白をしてしまうということです。

 また、このような状況になった場合、警察も、この目の前にいる者になんとしても真実を語らせたい、反省させたいとして、被疑者に雰囲気によりその客観的な事実に沿うような事実は何なのか誘導してしまったり、このものが矛盾する事実を語ったとしても、言い逃れや、思い込みから、客観的と思われる証拠にしたがって、うっかり証拠を話し、被疑者の供述を誘導することになってしまうようです。

 そのため、筆者は、このような自白がされた場合に、自白した証拠の信用性が、低く、被告人を無罪とすべきではないかと述べています。

 私としても、自白した証拠の証拠価値は高いということが刑事事件についてはあてはまるものではないと考えていますし、この本は、私の考えを裏付けるものになっているのではないかと思います。

 つまり、人は、自分に不利益なことを言うはずはないという経験則から、人が不利益な事実を認めた場合、その事実は真実であるはずだという経験則から、じはくした事実については真実性が高いと考えられています。しかし、刑事事件については、取調室という警察官と被疑者の間で、有形無形の圧力がかかったうえで、それらしい事実を自白してしまうので、その自白というものは、真実に沿ったものになるとは限らないからです。

 このように、自白による事実認定は危ういところがあるため、自白に頼る捜査手法は見直されていくべきではないでしょうか。

 

虚偽自白を読み解く (岩波新書)

虚偽自白を読み解く (岩波新書)

 

 また、この本の著者は過去に、自白の心理学という本を出しています。興味があればぜひ読んでみてください。

 

自白の心理学 (岩波新書)

自白の心理学 (岩波新書)