刑法事例演習教材 事例32

要望があったので、刑法事例演習教材 第2版の僕の解答もここに載せておきます。

ツイッターに書いたように、神戸ローでの提出期限の後にブログに上がるようにします。

これまでのロープラの解答よりも突っ込みどころが多くあると思いますが、その際には遠慮なくコメント等で、突っ込みを入れてください。励みになります。

 

刑法事例演習教材 第2版

刑法事例演習教材 第2版

 

 

 

1.自動車運転過失致傷罪

(1)自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条よれば、自動車を運転する上での過失によって人に傷害を与えた場合には自動車運転過失傷害罪が成立する。

(2)過失犯における実行行為とは、結果回避義務違反行為を指す。

 本件事案において、甲は法定速度の時速40キロメートルから時速20キロメートルオーバーした時速60キロメートルで走行し、Aに自動車をぶつけて転倒させているため、結果回避義務違反行為があったということができる。

 また、それによって傷害を与えているため、結果回避義務違反行為によって窓外を与えたということができる。

(3)過失犯が成立するためには、責任要素として結果予見可能性が必要であるとされている。結果予見可能性が無い場合には、刑法381項によって故意が欠けるとされる。

 本件事案において、甲は、昼である午前1時頃、見通しの良い田舎道を走行し前方を十分に注意した運転を行っていたのであるため、Aの飛び出しを認識できる状態にあったということができる。また、法定速度を超過しているという事実も、スピードメーター等から認識可能であったということができる。したがって、甲には速度超過によってAをはねる可能性があることを認識し得たということができる。

 したがって、甲には予見可能性があったということができる。

(4)また、この事故が発生したのは、自動車の運転による際のことであるため自動車の運転によるものということができる。

(5)したがって、甲は自動車運転過失傷害罪の罪責を負う。

2.甲と乙の保護責任者遺棄罪の共同正犯

(1)刑法60条によれば、共同して犯罪を実行した場合には共同正犯が成立するとされている。

 本件事案において、甲は、自動車内での乙との相談通りに、Aを自動車に乗せ、B公園のベンチに座らせ、逃走しているため、甲と乙は共同して犯罪を実行したといえる。

 よって、甲と乙は刑法60条により共同正犯の罪責を負う。

(2)次に、刑法218条にいう「保護責任者」とは、養父所者に対して、保護を行うべき者を指し、これは、法律や、引受状況などから犯罪の結果原因を支配しているといえる者に保護責任者としての地位が認められる。

 本件事案において、道路交通法72条上運転者である甲及びその他乗務員である乙は救護義務を負っており、また、Aを甲及び乙の乗車する自動車に乗せ、病院に向かっているため、引き受け行為はあったということができる。そのため、甲及び乙は、結果原因を支配しているといえ、保護責任者としての地位が認められる。

(3)「病者」とは、扶助を必要とする生理機能の障害を負った者のことを指す。そのため、足に障害を負ったAは刑法218条の病者に含まれる。

            (4)刑法218条にいう「遺棄」とは、扶助すべきものを、移置により保護のない状態に置くことを指すとされる。

 本件事案において、甲及び乙は、AB公園に移置している。この公園は救急車を呼べば救命される場所であったとはいえ発見が困難になり、Aの生命に危険をもたらす場所であったということができるため、保護のない場所であったということができる。甲及び乙は遺棄を行ったということができる。

(5)従って、甲及び乙は刑法218条の保護責任者遺棄罪の共同正犯の罪責を負う。

3.したがって、甲には、自動車運転過失傷害罪と乙との共同正犯による保護責任者遺棄罪が成立し、刑法45条により併合罪となる。また、乙は甲との共同正犯による保護責任者遺棄罪一罪の罪責を負う。