刑法事例演習教材 事例31

 今回の問題は、承継的共犯に関する問題です。昨年に承継的共犯を肯定するような最高裁判例が出たのでその最高裁判例も押さえつつ書きたいのですが、今回の答案には反映できていません。

 というより、僕としては、その最高裁の規範を押さえられずにいます。

また、今回の答案では、未遂犯の部分の書き方がよくないように思われるので、復習の際に書き方を修正しておきたいです。

 

刑法事例演習教材 第2版

刑法事例演習教材 第2版

 

 

 

第一甲の罪責

1.昏睡強盗未遂罪の共同正犯の成否

(1)刑法60条の共同正犯が成立するためには犯罪を共同して実行したといえなければならない。

 本件事案において、甲はAとともにスナック「東山」において、経営者B睡眠薬を飲ませ、金品を盗取することを計画して、B睡眠薬を飲ませていることから、甲とAは共同して犯罪を実行しているということができる。

(2)刑法43条本文によれば、未遂犯が成立するには、犯罪の実行に着手し、犯罪の目的を遂げなかったといえなければならないとされる。犯罪の実行に着手したといえるためには犯罪の結果発生に密接な関連性を有する行為を行ったといえなければならないとされる。

 本件事案において、甲とAは経営者B睡眠薬を飲ませ、金品を盗取することを計画したうえで、B睡眠薬を飲ませている。このB睡眠薬を飲ませる行為を行った場所は、スナック「東山」で、その後の党首行為を行う予定の場所もスナック「東山」と同一の場所であったこと、スナック「東山」で他の客がいなくなったところで実行しており特段の障害となる事情もないこと、また、スナック「東山」での盗取行為には、Bが昏睡していることが必要であるため、甲らが、B睡眠薬を飲ませた時点で甲とABに対する刑法239条のこん睡強盗のための密接関連した行為を行ったということができる。

 そのため、甲とAB睡眠薬を飲ませた時点でBに対するこん睡強盗に着手したということができる。

 さらに、甲とABをこん睡させることができず、その目的を達していないため、刑法43条本文により、刑法243条のこん睡強盗未遂罪が成立する。

2.強盗罪の共同正犯

(1)刑法60条の共同正犯が成立するためには、共同して犯罪を実行したといえなければならないところ、Bに対する暴行について、甲はAとともに計画しておらず、甲はそのための準備を行っておらず、また、甲がAとともに暴行を行ったという事実もないため、甲はAとともに犯罪を行ったということはできない。

 しかし、甲は、Bが抵抗する気力を失った後、A、乙とともにBの金品を奪取しているため、この金品―行為については、共同した実行したということができる。また、共犯の因果性は訴求することはないため、甲はこれ以前のAの行為についての罪責を負うことはない。

(2)刑法235条の窃盗罪が成立するためには、他人の財物を不法領得の意思の下不法に占有を移転させたといえなければならないとされる。

 本件事案において、スナック「東山」にあったBの金品はBが気絶しているとはいえ、Bが占有する財物であり、そのような物を遊興費目的で使用するために奪取していることから、不法領得の意思の下財物の占有を不法に移転させたということができる。

 したがって、甲はAと乙との窃盗罪の共同正犯としての罪責を負う。

3.よって甲には、Aとの昏睡強盗未遂罪の共同正犯と、A、乙との窃盗罪の共同正犯の罪責を負い刑法45条により併合罪となる。

第二乙の罪責

1.窃盗罪の共同正犯の成否

(1)共同正犯が成立するためには犯罪の結果発生に向けた因果を共有したといえなければならないとされ、因果性は訴求することがないことから、共犯行為に及ぶ前に他の共犯者が行った犯罪についての罪責を負うことはないとされる。

 本件事案において、乙はABに対して暴行をはたらき、Bが抵抗する意思を失ったところで、スナック「東山」に到着し、Aから犯行計画について初めて連絡を受け、この計画に同意したうえでBの金品を奪っているが、これは、Aの暴行を利用したなどと、乙がBに対し、Aとともに暴行を行ったと評価できるものではないため、乙はAの暴行から参加するまでの行為について罪責を負うことはない。そのため、乙は、A、甲とともにBの金品を共同して奪ったことについて共同正犯としての罪責を負う。

(2)刑法235条の窃盗罪が成立するためには、他人の財物を窃取したといえなければならない。

 本件事案において、乙は、Bの財物たる金品を手間賃として、不法に占有を移転させているため、他人の財物を窃取したということができる。

2.したがって乙はAと甲との窃盗罪の共同正犯としての罪責を負う。