小問1は大きく間違えているような気がします。解説を見たところ、Dの契約もEの契約も設立に関連する行為として会社に帰属すると判断したほうがよかったようです。
この年の問題について書けなくてもいい論点としては、設問2の株主総会無効の訴え、設問3の端数否の株主の取り扱いがあるようです。満点の答案を目指すのであれば書いておきたいのですが、正直あえて書くにしても筋悪な気がします。
他におかしな点があればコメントにお願いします

司法試験 論文過去問答案パーフェクトぶんせき本〈平成29年度版〉
- 作者: 西口竜司,柏谷周希,原孝至
- 出版社/メーカー: 辰已法律研究所
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設問1
小問(1)
1.甲社はDから賃料60万円の支払、Eから報酬40万円の支払いを求められているが、これらの契約の効力が甲社に帰属しないことを理由に拒むことができるか検討する。
2.会社法28条4号によれば、株式会社の設立に関する費用については会社法26条1項の定款に記載しなければ効力を生じないとされていることから、株式会社の設立に関しない事項例えば、開業準備行為などについては会社法上効力が生じないとされる。
3.本件事案において、甲社の発起人AはD及びEとの間で契約を締結していることから、その効力について分けて検討する。
(1)AはDとの間で事務所用の建物の賃貸借契約を行っているが、事務所用建物の賃貸借というものは、甲社の事業を開始するための開業準備行為に当たり、甲社の設立とは無関係である。よって、会社法28条4号の行為に該当しない。
したがって、甲社はAD間の賃貸借契約の効力が自国帰属していないことを理由として、賃料60万円の支払いを拒むことができる。
(2)AはEとの間で、設立事務を補助するために雇用契約を締結しているが、設立事務の補助というものは公社の設立にかかわる事項であるため、会社法4号(原文ママ)の行為に該当する。
そのため、Eが甲社に請求を行うためには、Eとの間の雇用契約が甲社の定款に記載されていなければならない。後者の定款によれば、設立費用について80万円以内とすることが記載されるにとどまっている。しかし、会社法28条4号によれば、どの設立に関する行為であるかということが明示されていなくともよい。
したがって、甲社定款には、Eとの間の40万円の雇用契約について記載があるということができ、AE間の雇用契約の効力は、甲社に帰属するということができる。
4.したがって甲社はDへの支払いを拒むことができるが、Eへの支払は拒むことができない。
小問(2)
1.まず、AF間の本件機械の購入契約は公社の事業を開業するための行為であることから、開業準備行為に当たり、会社法28条によって甲社に効力が生じることはないということができる。
したがって、本件機械の購入契約の効力はAF間で発生し、Aが800万円の支払い義務を負うとされる。
2.そのため、会社設立後に本件機械を取得するためには会社法467条1項5号に基づき取得しなければならない。
本件機械の価格は800万円であることから、Aから本件機械を得るためには会社法309条2項1号により、株主総会の特別決議を経なければならない。
3.したがって、甲社は会社法467条1項により、株主総会の特別決議を経ることによって本件機械を取得することができる。
設問2
1.Gは会社法831条1項に基づき本件決議の取消しを求めようとしているが、可能であるか検討する。
2.会社法831条1項1号によれば、株主総会の招集手続きは決議の方法が法令に違反する場合で、株主総会の決議の日から3カ月以内であれば、訴えを提起することにより、株主総会決議の取消しを行うことができるとされる。
(1)まず、GはKがHを代理して、議決権行使を行ったことが決議方法の法令違反に該当すると主張すると考えられる。
会社法310条によれば、株主は代理人によって議決権を行使することができるとされており、行使する際には、代理権を証明する書面を提出しなければならないとされている。
本件事案における乙株式会社従業員持株会規約によれば、10条1項で、理事長に信託されており、2項で株式も理事長名義となっていることから、乙社株式1200株について、Hが有していることとなる。そのため、Hが代理人によって行使させることを認め、株主総会において、代理権行使を証明する書面が提出された場合、その代理人が議決権を代理行使することができる。
本件事案において、HはKに代理行使させることを決定しており、議決権を行使しているが、この際H作成の委任状が乙社に提出されているため、KがHを代理して議決権を行使することができる。
したがって、KがHを代理して議決権を行使した点について、株主総会決議の法令違反はない。よってこのことを理由として、Gは本件決議を取り消す訴えを提起することができない。
(2)次に、Gは乙社がLに議決権を行使させなかったことが会社法831条1項1号にいう決議の法令違反に当たると主張すると考えられる。
株主が死亡した場合、株式は相続人に包括承継されることとなるものの、株式の帰属を対抗するためには会社法130条1項に基づき、株主名簿に記載されなければならない。
本件事案において、Iが死亡したことにより唯一の相続人LがIの株式800株を包括承継しており、招集通知を受け取った日の翌日である平成28年6月3日に株主名簿の名義書き換えを行っているため、株主総会決議の際に、自己の株主としての地位を会社に対抗することができる。
したがって乙社がLに対し議決権を行使させなかったことは決議の方法の法令違反に当たるということができ、会社法831条1項の取消事由に該当する。
(3)Gは説明義務違反があることが会社法831条1項1号の決議方法の法令違反に該当するとして本件決議の取消しを求めることを主張すると考えられる。
会社法314条本文によれば、説明を行わなければならないことが規定されているが、但書によれば、正当な事由として、会社法施行規則71条に規定する事由があると認められる場合には説明を拒むことができるとされる。
本件事案における乙社を甲社の完全子会社化するという目的が株主総会において知れた場合、乙社が更正に株式を取得させることができなくなるため、本件株主総会において乙社はこの目的を説明しなかったと考えられる。そのため、会社法施行規則71条4号にいう正当な事由があるとして乙社は説明を拒むことができる。
したがってGはこのことを決議の法令違反として主張することができない。
3.よってGはLに議決権を行使させなかったことを理由として会社法831条1項の取消事由として主張することが考えられるものの、会社法831条2項によって裁量棄却されないか検討する。
会社法831条2項によれば、違反の事由が重大でなくかつ決議に影響を及ぼさない場合は裁量棄却することができると規定されている。
本件事案において、Lが議決権を行使したとしても、G及びLのみでは議決権の3分の1を超えることができないため、決議に影響を及ぼさないといえる。また、Lが議決権を行使できなかったことは重大な違反ではない。
4.したがってGは会社法831条1項に基づき本件決議の取消しを主張できるが、会社法831条2項により裁量棄却される。
設問3
1.Lは会社法182条の4第1項に基づく株式買取請求権を行使し、会社法182条の5第1項により相当の価格によることを求めることができるか検討する。
2.会社法182条の4第1項によれば、株式買取請求権を行使するためには、一株に満たない端数が生じることと、反対株主であることが認められなければならない。
本件事案において、乙は3,000株を1株に併合することを決議していることから、Lの800株は1株に満たない株式となったということができる。また、Lは議決権の行使をすることを違法に拒まれたものであるが、会社法182条の4第2項(原文ママ)2号にいう議決権を行使することのできない株主に含まれることになる。なぜなら、拒んだ理由が違法であった場合、事実上議決権を行使できなかった場合と同視することができるからである。
3.したがってLは会社法182条の4、182条の5に基づき相当価格での株式買取請求を行うことができる。