令和元年司法試験民事訴訟法

司法試験民事訴訟法を解きました。

どう書いていいのかわからないところが多く、いい答案になっていないような気がします。

ここがおかしいなどの点を発見したら、コメントにお願いします。

 

民事訴訟法 新版

民事訴訟法 新版

 

 

 

設問1

1.課題(1)について

(1)民事訴訟11条によれば、管轄の合意があれば、合意された場所での裁判をすることができるとされている。この民事訴訟11条の規定というものは、他の裁判所の管轄を否定する規定ではないことから、合意された地方裁判所以外の管轄を否定するためには、管轄の合意に際して、他の裁判所の管轄を排除する旨の定めがなければならないと解されている。

(2)本件事案において、Yは「本件契約に関する一切の紛争はB地方裁判所を第一審裁判所とする」との定めを置いていることから、民事訴訟111項に基づき、B地方裁判所が管轄権を有しているということができる。

 また、本件定めには、B地方裁判所に専属する旨の定めがないことから、XYに対する訴訟を他の裁判所にも提起することができる。

(3)したがって、Yの主張する通りに、本件定めにより、B地方裁判所のみが管轄裁判所であると解することはできない。

2.課題(2)について

(1)民事訴訟161項によれば、管轄違いの場合に移送を申し立てることができると規定されているものの、相当と認める場合には、自ら審理判断をすることができると規定されている。

 本件事案において、確かにXYとの間で管轄合意を行っているものの、Xが本件車両を購入したのはYA支店であり、本件事故の発生した本件車両もXA市のXの自宅車庫に所在していることから、XY間の契約に関する証拠もA地裁の管轄区域内に集中しているということができる。また、Xは会社員である一方、Yは全国各地に支店を有する会社であることから、Yの方が資力の面でも優れ、B市から、600kmも離れたA市で裁判を行ってもYにとって過大な負担とならないことを考慮すると、A市で裁判を行うことが相当である。

(2)そのため、本件定めについてYの解釈を前提としても、民事訴訟162項により、A地方裁判所で裁判を行うことができる。

設問2

1.弁論主義とは当事者の主張について当事者のイニシアティブに委ねる考え方であるが、この考え方から、弁論主義の第二テーゼすなわち裁判所は民事訴訟179条に基づいて、当事者の行った自白に拘束され、当事者は自由に自白を撤回することできなくなるとされる。この弁論主義の効果というものは、主要事実にのみ発生するとされている。

 本件事案において、YXYに対する売買契約の解除及び原状回復請求を求める訴訟において、④の事実を認めているが、民法541条に基づいて履行遅滞を理由とする介助を主張するためには契約の存在、債務の履行のないこと、催告が行われたこと、相当の期間内に債務の履行を行わなかったことを主張しなければならないとされる。そのため、Xとしては、履行遅滞解除を理由とする解除及び原状回復を求めるためには契約の存在についての主張として①を、履行のない事実の主張として⑤を催告と相当の期間に履行のない事実の主張として⑥を主張すればよい。

 そのため、④の事実というものは、Xのもとの請求との関係では、⑤の事実を推認するのに役立つ間接事実として位置づけられる。

2.しかし、Xが、債務不履行に基づく損害賠償請求を追加している。そのため、Xとしては、この債務不履行に基づく損害賠償請求として新たに損害の事実を主張しなければならず、債務不履行に基づく損害賠償請求を行うためには、契約の存在と、債務の不履行と、損害の発生の事実を主張を行わなければならないところ、証拠共通の原則により、契約の存在と債務の不履行の事実は主張されていることから、Xは損害の発生についての主張を行わなければならない。

 そのため、本件事案においてXは⑧⑨の事実を新たに主張していると解されるものの、④の事実というものはうったえの追加がされた後も、債務の不履行の事実を推認するに過ぎない間接事実であるため、弁論主義の第二テーゼによる自白の拘束力は発生しない。

3.したがって、Xが訴えの変更をした後も④の事実を認める旨の陳実を自由に撤回することができるといえる。

設問3

1.まず、民事訴訟2201号から3号の事由に該当しないか検討しなければならないところ、本件日記には訴訟において引用されたものでも、Xに引き渡されたものでも、TXの利益のために作成したものでもないことから、民事訴訟2201号から3号によってZの文書提出義務を基礎づけることはできない。

2.次に、一般義務文書が問題になるものの、民事訴訟4号イ~ホの事由が存在する場合、文書提出義務が除外される。本件日記については特にイ、二の事情が問題となる。

 そのため、イとニの事由に該当しそうな事由について検討する。

(1)民事訴訟2204号によれば、文書の所持者に関係する一定の文書について除外事由に該当することが規定されている。そのため、民事訴訟196条を検討しなければならないところ、親族の名誉に関する事項については除外事由に該当するとされる。本件日記についてはアの事情から、Zの配偶者に関わる文書であるものの、イ、ウの事情から、Tの名誉とはかかわりのないものといえる。

 そのため、イの除外事由には当たらない。

(2)民事訴訟2204号ニによれば、自己専利用文書についての除外受有が規定されているが、自己専利用文書とは、内部に向けて書かれたものであり、文書の作成者に不利益を及ぼすものであり、文書を開示すべき特段の事情のないものを指す。

 本件日記というものは、イによれば、Tの自己利用に供される者であったことから、Tが内部において記載したものとみることができ、イの事情が書かれていることから、公開されるとTの判断を阻害する恐れがあるということができる。しかし、Tは死亡しているため、文書を開示すべき特段の事情があるといえる。

 そのため、ニの除外事由には当たらない。

3.そのため、文書提出義務については、民事訴訟2204号イ、ニが問題となり、これに本件日記は該当しないと考えられる。