『良心的兵役拒否の思想』を読みました
コロナウィルスの関係で家にいなければいけなくなったので、良心的兵役拒否の思想 (1969年) (岩波新書) を読んでみました。
これを読んでみたのは、憲法II-基本権論[第二版]の思想信条の自由の項目に良心的兵役拒否という見慣れない用語が出てきたからです。
この本によれば、良心的兵役拒否とは、本来「宗教上の良心に基づく反戦行為」のこととされています。
そのため、戦争そのものが悪であるとする哲学や、自己の良心に反することを強制されないという自由主義的な思想によって兵役を拒むこととは異なるとされています。また、単純に家計や、経済活動を理由とするものや、家の維持のための兵役拒否とも異なります。
また、良心的兵役拒否を行った場合、代替措置として戦時の病院での業務に従事したり、するなどの活動に従事することとなります。そのため、全く戦争と無関係な活動をしなくてよくなるというわけではないとされています。
しかし、現在では、良心的兵役拒否の思想は、キリスト教の歴史や、アジアの歴史において、長年妥当性が吟味され続け、反戦思想家の命をかけた戦いによって正当性が主張され続けたため、法制化されたり、哲学的、自由主義的な思想による兵役拒否についても良心的兵役拒否に当たることが認められています。
このように、この本は、良心的兵役拒否の思想の源流や良心的兵役拒否の思想の意味の拡張、反戦思想の歴史を振り返るのに非常にいい本となっています。
ただし、良心的兵役拒否と日本国憲法との関係については、憲法II-基本権論[第二版]以上の解説はなく、今後の課題とされているようでした。私としても、憲法19条や、憲法20条1項前段、2項や、憲法9条との関係は気になるので、これらについての論文や書籍も読んでみたくなりました。