スポーツ法まとめメモ(4)

スポーツ法のまとめとして、刑事法とスポーツについて書いていきます。

 

標準テキスト スポーツ法学 第2版

標準テキスト スポーツ法学 第2版

  • 発売日: 2017/09/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 スポーツ事故に関する刑事罰

  スポーツ事故に関して刑事罰を科することはたいていの場合妥当ではないとされている。というのも、①スポーツは勝敗を競うという性質上、時には激しい肉体の衝突が起こる場合がある(ラグビーや、プロレスなど)など、ある程度法益侵害が予定されている。また、②司法権の過度な介入は、アスリートを委縮させるなどしてスポーツの醍醐味を奪うことになる。

 そのため、スポーツ事故が起こったとしても、そのスポーツ行為がルールによって許容されている限り刑法35条の正当行為として違法性が阻却される。一方、ボクシングの最中に故意に殺害した場合や、野球のデッドボールを故意に作った場合には違法性は阻却されないと考えられている。

 なお、千葉地裁平成7年12月13日判決はダートトライアルの最中に同乗した指導者を死亡させた事件について正当行為として無罪とした。この事件では、①危険を予見して引き受けたといえ、②社会通念上その危険が容認されていた場合に危険の引き受けとして正当行為になると判示している。

 また、スポーツ指導中にアスリートを死亡させた場合不作為犯として過失致死罪などに問われることがある。この事例として東京高裁昭和51年3月25日判決がある.

 

体罰・セクハラ

  学校教育法11条に教師の懲戒権が規定されていることから体罰を正当化できるとの見解があるため、部活中のスポーツ指導について体罰が行われることがままあるが、学校教育法11条は体罰を許容したものではない。そのため、体罰については他の犯罪と同様刑法208条の暴行罪や刑法204条の傷害罪に当たる。

 また、指導者とアスリートとの絶対的な関係から強制わいせつ・強制性交などの性犯罪が行われることがある。ただし、現行法上単に指導者の地位を利用してわいせつ行為や性交に及んだ場合に指導者を処罰する規定はない。足を開かせるなどの反抗を困難にする程度の暴行・脅迫(わりかし軽度のものでよい)を行いわいせつ行為や、強制性交に及んだ場合には、刑法176条、177条によって処罰される。

 

ドーピング

 ドーピングについては処罰規定はない。しかし、競馬において馬に対して覚せい剤を使った場合や、自己の競技能力を向上させるために麻薬・覚せい剤を使った場合には覚せい剤取締法により処罰される。

 

イベントのダフ行為やチケット高額転売

 スポーツイベントのチケットに関してのダフ行為については迷惑防止条例で取り締まられていた。また、チケットの高額転売については、特定興業入場券の不正転売の禁止等による興業入場券の適正な流通に関する法律がある。文化庁のサイトに詳しい説明がある。

 

 八百長

 競馬法などに八百長を行った場合の処罰規定がある。

 

 

 

 

 なお、刑法をゲームで学べるものとして刑法ポーカーが発売されています。