スポーツ法まとめメモ(11)
今回はスポーツと独禁法についてまとめていきます。
最近個人事業者に公正取引委員会が介入してくるようになってきたので、タイムリーな話題かもしれません。
ただし、私自身独占禁止法について勉強したことがないため、内容をうまく掴めている自信はありません。
概説
企業はそれぞれ創意工夫を発揮して品質が良く、かつ、価格の安い商品やサービスを消費者に提供して消費者に選んでもらい対価を得て利益を上げる。消費者は、企業間で公正かつ自由な競争が行われているからこそ、企業の提供する商品やサービスのうちから、安くて優れたものを選ぶことができる。市場におけるこのような企業と消費者の行動が、国民経済の健全な発展へとつながる。このことを前提として、独占禁止法は公正かつ自由な競争の確保を目的とし手制定されている。
独占禁止法上の規制対象は、①私的独占、②不当な取引制限、③不公正な取引方法、④事業支配力の過度な集中、⑤企業結合である。
スポーツと独占
スポーツは、一定のルールの下で、身体を使って、その結果を競うという特徴がある。この競争というものは独占指向があるため、国民の私的活動に関する面と公益、公共に関する面と衝突する場面がある。
この独占指向というものは、①勝利の独占(勝利したものが勝ち続けることができるような性格がある)、②スポーツ団体によるスポーツの独占(大会のための競技団体による主催の独占)、③リーグによるスポーツによる統括。
リーグと独禁法
リーグに対する独占禁止法の適用については、①リーグとクラブ、②リーグ同士、③リーグと選手の三つ観点から考える。
独占禁止法上の事業者団体に当たるといえるためには、「事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とすることを主たる目的とする二つ以上の事業の結合体または連合体のことを指すとされる。
リーグとクラブ
NPBについては球団同士の組合なので共同事業体である。このことから、独占禁止法上の事業者団体に当たると考えられている。Jリーグに関しては一般社団法人であるため、検討を要する。
プロ野球のホームタウン制については市場分割カルテルではないかとして問題となっている。
独占禁止法8条の2第4号の市場分割の規制については、公取のガイドラインによれば、「構成事業者別に、事業活動を行う地域や商品または役務の種類等の範囲を制限すること」を指すとされる。しかし、スポーツリーグについては、販売地域を限定し、市場を地域に分割しているのではない(福岡ではソフトバンクホークスのみを応援しなければならないとのルールはない)ため、不当な取引制限に該当するとはされていない。
リーグ同士の関係
リーグビジネスを新たに立ち上げる団体はないものの、リーグが新たに入ってくることを阻止したりすると、不当な取引制限や、不公正な取引方法に該当することになりかねない。
リーグと選手の関係
リーグと選手との間に独占禁止法の適用があると解されている現在(公正取引委員会のサイト参照)、リーグと選手との間に独占禁止法の適用があると解される余地が出てきている*1
これによると共同して選手の移籍を制限することは独占禁止法上違反になりうるものの、勢力均衡を目指すスポーツ競技の特性を考慮すべきと考えられている。
*1:標準テキスト スポーツ法学 第2版311頁によれば、この版が発行された当時、リーグと選手の間に独占禁止法の適用はないと考えられていたようである。