2020年5月18日 勉強したことメモ(比例原則の書き方)

最高裁平成24年1月16日判決(国旗・国家訴訟)をもとに比例原則の書き方を検討する。

 

 

 公務員に対する懲戒処分については懲戒権者に裁量権があることが認められている(裁量のあることの認定)。

 そのため、社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを乱用したと認められる場合に、違法となる(最良判断について違法となる場合の基準)。

 そのうえで、戒告を超えたより重い処分を下す場合について。以下のように述べている。

 「不起立行為に対する懲戒において戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することについては、本件の性質等を踏まえた慎重な考慮が必要となるといえる。そして、停職処分は、処分のそれ自体によって教職員の法的地位に一定の期間における職務の停止及び給与の全額の不支給という直接の職務上及び給与上の不利益が及び、将来の昇給等にも相応の影響が及ぶ上、本件各通達を踏まえて毎年年度2回以上の卒業式や入学式等の式典のたびに懲戒処分が累積して加重されると短期間で反復継続的に不利益が拡大していくこと等を勘案すると、上記のような考慮の下で不起立行為に対する懲戒において戒告、減給を超えて停職の処分を選択することが許容されるのは、過去の非違行為による懲戒処分等の処分歴や不起立行為の前後における態度等に鑑み、学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容と権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎づける具体的な事情が認められる場合であることを要すると解すべきである。」と限定している。

 そのうえで、年間に入学式、卒業式等の式典で数度の戒告処分を受けているだけでは相当性は基礎づけられないとしている。これに比べて、処分歴に係る非違行為が規律や秩序を害する程度に大きい場合には停職処分を基礎づけることができるとしている。

 重大な非違行為がないとされた職員と判断される場合とそのあてはめとして以下のように述べられている。

 X2の「過去の懲戒処分の対象は、いずれも不起立行為であって積極的に式典の進行を妨害する内容の非違行為は含まれておらず、いまだ過去2年度の3回の卒業式等に係るものにとどまり本件の不起立行為の前後において特に処分の加重を根拠付けるべき事情もうかがわれないこと等に鑑みると」停職処分を選択する相当性はないと判断された。

 X1の問題となった行為として、「不起立行為以外の非違行為による3回の懲戒処分及び不起立行為による2回の懲戒処分を受け、前者のうち2回は卒業式における国旗の掲揚の妨害と引き下ろし及び含む事故再発防止研修における国旗や国歌の問題にかかるゼッケン着用をめぐる抗議による進行の妨害といった積極的に式典や研修の進行を妨害する行為に係るものである上、更に国旗や国歌に係る対応につき校長を批判する内容の文書を生徒への配布等により2回の文書訓告を受けて」いたことが問題となった。そのため、停職処分は相当であると判断した。

 

比例原則は要するに効果裁量の問題であるとみてよい。

以下の順に検討する

裁量権はあるか

裁量権の行使が違法となる基準の設定

③原則的な処分の設定

④原則的な処分に当てはまるかそれより悪質な行為であるかの認定