事例演習刑事訴訟法 事例4

現行犯逮捕と再勾留に関する問題です。

 

事例演習刑事訴訟法 第2版 (法学教室ライブラリィ)

事例演習刑事訴訟法 第2版 (法学教室ライブラリィ)

  • 作者:古江 頼隆
  • 発売日: 2015/03/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 

設問1

1刑事訴訟法2051項によれば、被疑者の交流を行うためには、刑事訴訟法203条に基づく送致が必要なことから、刑事訴訟法に基づく適法な逮捕がなければならないとされる。

 そのため、まず本件事案において適法な逮捕が行われたか否か検討する。

(1)刑事訴訟法213条によれば、現行犯逮捕の場合には犯人性が明らかなため、無令状で行うことができるとされている。刑事訴訟法2121項によれば、犯罪を行いまたは行い終わった者を指すとされている。または、刑事訴訟法2122項各号のいずれかの要件を満たし、犯罪のあった場所から時間的場所的に近接しており、刑事訴訟規則143条の3の規定に基づく逮捕の必要性が認められなければならない。

(2)本件事案において、XコンビニエンスストアA店から8キロメートル離れた路上で2時間後に逮捕されているため、犯罪を行ってから間もないということができない。そのため、刑事訴訟法2121項の現行犯として逮捕することはできない。

(3)また、XA店の店員Vの供述した犯人の特徴である50歳くらいの男、身長170センチメートル、小太り、高級スーパーマーケットZのエコバッグを所持しているという特徴に合致している。また、XA店の被害額と同じ金額5万円を所持しているため、刑事訴訟法21222号の贓物に当たるといえそうであるものの、金銭は外形から入手経路やA店のものと同一かどうか判断することはできないため、贓物であるか明らかでなく、刑事訴訟法21222号の贓物に当たらない。

 そのため、K刑事訴訟法2122項に基づき準現行犯としてXを逮捕することはできない。

2.したがって、Xに対する適法な逮捕はないということができるため、刑事訴訟法2051項に基づき勾留することができない。

設問2

1刑事訴訟法1993項によれば、再逮捕を前提としていると解されるものの、再度の逮捕を行うと、勾留期間の厳格な定めを潜脱することになるため、再逮捕を行うべきやむを得ない必要性の存在と、事情変更があり、前の勾留の裁判の蒸し返しに当たらないといえなければならない。特に違法な手続きによって被疑者が釈放された場合には将来の違法捜査の抑止のため逮捕を行うことが許されないといえるほどの重大な違法があり、逮捕を許さないことが相当であるといえなければならない場合に再逮捕が認められるとされる。

 本件事案において、Xは違法な現行犯逮捕があったため勾留が認めらず釈放されているものの、Kが明白性を誤ったにすぎず重大な違法があるとは言えない。そのため、再逮捕が認められる事情があるということができる。

2.したがって、Xに対する再度の逮捕が認められる。