ロープラ民訴 発展問題22
今回は不利益変更禁止原則に関する問題です。
1.民事訴訟法304条によれば、当事者の不服申し立ての限度に限り判決の変更を行うことができるとされていることから、当事者の不利益に判決を変更してはならないとされる。
当事者の不利益に変更したか否かは判決主文中に法律上の利益があるかによって判断される。
本件事案において、XはYの予備的相殺の抗弁を容れて、Xの請求を棄却した裁判所の判断に対して上訴を行っている。確かにこの場合、判決主文の判断ではなく、判決理由中の判断について不服があるということができる。しかし、この場合に裁判所がXの貸金債権が存在しないとしてXの請求を棄却した場合Xの敗訴の判断が維持されるばかりでなく、相殺に用いられたYの債権も民事訴訟法114条2項により消滅したことが確定されないこととなりXにとって一審判決より不利益になる。
そのため、本件事案において、控訴審の裁判所は、Xの債権が存在しないとしてXの請求を棄却することはできない。
2.したがって、控訴審の裁判所は、Yの予備的相殺の抗弁を容れてXの請求を棄却すべきである。