ロープラクティス民事訴訟法 発展問題23

独立当事者参加と上訴についての問題です。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 第一.Xが控訴した場合

1.民事訴訟法296条1項によれば、口頭弁論は、当事者が第一審判決の変更を求める限度においてのみすることができるとされることから、移審効が生じるのは、第一審判決に対する不服申し立ての限度に限られる。

 本件事案において、第一審裁判所は、独立当事者参加をしたZのX及びYに対する請求を認め、XのYに対する請求を棄却したことが認められる。そのため、Xが控訴した場合、XのYに対する所有権確認の訴えと物の引き渡し請求、ZのXに対する所有権確認の訴えについて移審効が生じる。

 そのため、控訴審で裁判所がXに所有権があると判断した場合、Xが所有権を有することと、物の引き渡しを請求することをYに認めさせ、ZのXに対する請求を棄却することができる。

2.民事訴訟法304条によれば、第一審判決の変更は不服申し立ての限度に限られることから、本来ZのYに対する請求について棄却することはできないはずである。

 しかし、民事訴訟法47条1項により独立当事者参加が行われた場合、民事訴訟法47条4項により判決の合一確定が要請されることになる。そのため、独立当事者参加が行われた場合に当事者の一人が上訴した場合には、判決の合一確定の観点から、上訴されていない請求についても不利益に変更されることが認められる。

 本件事案において、ZのYに対する請求に対して控訴されていないことから、本来ZのYに対する請求を棄却することはできないものの、Zは独立当事者としてXY間の訴訟に参加しているうえ、Zの請求を認めた場合、XのYに対する請求を認めたことと矛盾することになるため、ZのYに対する請求は棄却される。

3.したがって、この場合、控訴審裁判所は、XのYに対する請求を認め、ZのX及びYに対する請求を棄却する判決を下すことができる。

第二.Yが控訴した場合

1.民事訴訟法296条1項によれば、口頭弁論は、当事者が第一審判決の変更を求める限度においてのみすることができるとされていることから、移審効は判決の不服申し立てを行った範囲に限られる。

 そのため、本件事案において、Yのみが控訴していることから、ZのYに対する所有権確認の訴え、ZのYに対するものの引き渡し請求に関してのみ移審効が生じているため、裁判所はZのYに対する請求を棄却する判断を下すことができる。

2.次に、この場合に、判決の矛盾の防止の観点から、XのYに対する請求、ZのXに対する請求についても変更しなければならないかが問題となるものの、ZもXも所有権者でないことで確定するため、判決に矛盾が生じない。そのため、民事訴訟法47条4項による合一確定が要請されることにはならない。

 したがって、この場合XのYに対する請求もZのXに対する請求も変更されることはない。

3.したがって、この場合、控訴審裁判所はZのYに対する請求を棄却するように判決を変更することができる。

以上