ロープラクティス商法問題23

ロープラクティス商法の問題23を解いていきます。

私が解いているものは ロープラクティス商法[第三版]ですので多少問題が違うかもしれません

 

Law Practice 商法〔第4版〕

Law Practice 商法〔第4版〕

  • 作者:黒沼 悦郎
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: 単行本
 

 

 1.XはYに対して、会社法831条1項に基づき本件決議の取消の訴えを提起しているが、認められるか検討する。

 会社法831条1項1号によれば、株主総会の決議の手続きに法令違反がある場合に株主総会決議の取消しが認められるとされる。

(1)会社法310条1項によれば、株主総会決議において、議決権を代理行使することができるとされている。しかし、同条5項によれば、会社は株主総会に出席する代理人の範囲を制限することができるとされる。なぜなら、代理人による無制限の権利行使を認めた場合、会社にとって望ましくない者が参加するおそれがあり、さらに、身分を確認するために時間がかかり、迅速な株主総会を行うことができなくなる恐れがあるためである。

 本件事案において、Y社の本件定款規定によれば、「株主は、当該株主総会において議決権を有する他の株主を代理人として、その議決権を行使することができる」とされているため、代理行使することができるのはY社株主に限定されている。にもかかわらず、Y社株主Aの娘であるにすぎないBが議決権を行使している。そのため、本件定款規定に違反した議決権行使があったということが認められる。

(2)会社の定款規定に違反したものが議決権を代理行使した場合であっても、会社法310条5項の趣旨に反しない者が議決権を行使した場合にはその議決権行使は適法なものであるといえるとされる。

 本件事案において、Aの代理人として娘のBが議決権の代理行使を行っているが、株主の親族とはいえ、身分確認は容易ではなく、会社にとって望ましい者でない可能性もあることから、会社法310条5項の趣旨に反する議決権の行使であるといえ、適法な代理行使であるといえない。

(3)したがって、本件総会には会社法310条5項違反があるということができるため、Xは会社法831条1項1号に基づき本件決議の取り消しを請求することができる。

2.会社法831条2項によれば、法令違反の程度が軽微であり、かつ株主総会の結論に影響を及ぼさないということができる場合に裁量棄却をすることができるとされている。

 本件事案において、Bが代理権講師をした議決権数は1である一方本件決議は賛成多数により決議されたということであることから、Bの権利行使の違法は結論に影響を及ぼさないものということができる。さらに、Y社も議決権の代理行使を誤ったにすぎないため、法令違反の程度も軽微であるということができる。

 したがって、Xの訴えは裁量棄却される。