この問題は訴訟代理についての表見代理の問題です。
1.XはYに対してAをY社の代表者として売買代金支払請求訴訟を提起しているものの、Aは実体法上代表取締役ではないため、訴えが却下されるのではないかということが問題となる。
代表者の表示を誤った訴訟は不適法なものであるが、もし表見代理の適用があるならば、代表者の表示を誤ったとしても適法な訴えということができる。
しかし、民法109条以下に来て記される表見代理は取引の安全を保護するための規定であり、取引とかかわりのない訴訟代理について適用することは想定されていない。そのため、表見代理の規定を類推適用して訴訟代理権についての表見代理の適用を認めることはできない。
したがって、代表者の表示を誤ったXの訴えは不適法なものとなると解される。
2.しかし、代表権者の表示を誤ったにすぎないため、民事訴訟法34条1項により補正命令がなされ、変更されない場合に訴えが却下される。