ロープラクティス商法 問題27

ロープラクティス商法の問題27を解いていきます。

この問題は株主総会決議取り消しの訴えについての出訴期間などを扱った問題です。

 

Law Practice 商法〔第4版〕

Law Practice 商法〔第4版〕

  • 作者:黒沼 悦郎
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: 単行本
 

 

 設問(1)

1.本件事案において、Xは会社法831条1項1号に基づき本件決議の取消の訴えを提起しようとしているが、この訴えが認められるか検討する。

(1)会社法831条1項1号によれば、株主総会決議取り消しの訴えを提起するためには、株主総会決議の日から3か月以内に訴えを提起しなければならない。本件事案において、株主総会決議がされたのは、平成24年3月15日であり、訴えが提起されたのは3か月以内の平成24年4月5日であるから、出訴期間内であるということができる。

(2)会社法831条1項1号によれば、株主総会決議取り消しの訴えを提起するためには、株主総会の招集の方法について法令違反があればよいとされる。

 本件事案において、YはC及びDに対して株主総会の招集通知を発していないため、会社法299条1項によって株主総会の招集通知を発するという規定に違反しているということができる。

 これに対して、Y社は、Xは自身の利益と関係のないCやDに関する手続きの違法を主張することはできないと主張することが考えられる。しかし、第三者に対する法令違反であっても、そのことが理由となって株主総会決議の結果が変わることが考えられるため、このような第三者に対する法令違反であっても主張することができると解されている。そのため、このようなYの反論は適当なものといえない。

(3)会社法831条2項によれば、法令違反の程度が重大でなくかつ株主総会の決議に影響を与えない場合、裁量棄却される。

 本件事案における瑕疵はC、Dに対する招集通知を発していないというものであるが、これはY側の過失により発生したものであり、法令違反の程度も重大ではない。さらに、CとDの議決権数は合計しても30しかなく、過半数は賛成しているのであるから、結論に影響を及ぼさないということができる。

  したがって、会社法831条2項により裁量棄却される。

2.よって、Xの請求は認められない。

設問(2)

1.会社法831条1項による株主総会決議取り消しの訴えの訴訟物は株主総会決議取消権ではなく、株主総会決議取り消しの違法事由である。そのため、法令違反の事由を新たに追加する場合、その事由について出訴期間が順守されていなければならない。

 本件事案において、XはC、Dに対して招集通知が発せられなかった違法から、招集期間不足についての違法に法令違反の事由を変更しようとしているため、招集期間不足についての違法を主張することについて出訴期間が遵守されているか問題となる。しかし、招集期間不足についての違法事由を追加したのは平成24年7月31日であり、株主総会決議の日から、3か月を渡過している。

 そのため、出訴期間外であるとして、この違法事由の追加は認められない。

2.よって、このような主張の追加はできない。

設問(3)

1.本件事案において、Xは平成24年8月に本件決議取り消しの訴えを提起しようとしているが、会社法831条1項によれば、株主総会決議取り消しの訴えを提起するためには決議の日から3か月以内であると認められなければならず、この出訴期間を渡過してしまっている。

 そのため、会社法831条1項に基づく本件決議取り消しの訴えは認められない。

2.次に会社法830条2項に基づく株主総会決議無効の訴えを提起することが考えられる。

 しかし、会社法830条2項によれば、この訴えを提起するためには、決議の内容が法令違反であると認められなければならないと規定されており、本件事案において、決議の内容が法令違反であると認められる事情はない。

 そのため、会社法830条2項に基づく本件決議無効の訴えを提起することはできない。

3.次に、会社法830条1項に基づく株主総会決議不存在確認訴訟を提起することが考えられる。

 会社法830条1項によれば、この訴えを提起することができる場合について規定されていないものの、株主総会が事実上存在しない場合か、株主総会について重大な違法があり存在しなかったと評価すべき場合であると認められなければならない。しかし、本件事案において、このような違法や株主総会が存在しなかったという事情はない。

 そのため、会社法830条1項に基づく本件決議不存在確認訴訟を提起することはできない。

 以上