ロープラクティス民事訴訟法 基本問題7

ロープラクティス民事訴訟法の基本問題7を解いていきます。

この問題は筆界確定訴訟に関する物です。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 1.取得時効の主張について

 本件事案において、XはYに対して筆界確定訴訟を提起している。

 筆界確定訴訟とは土地の境界について既判力により確定させる公法上の確認訴訟である。この訴えを提起するためには隣地の所有者を被告としなければならない。

 本件事案において、YはXの主張に対する反論としてabcdで囲まれた土地を時効取得したと主張し、Xは当事者適格を欠くと主張している。しかし、前記の通り筆界確定訴訟の当事者は隣地の所有者であるため、隣地全部を時効取得したと主張しない限り隣地の所有者でないとして当事者適格は失われることはない。Yはabcdで囲まれた土地を時効取得したことを主張しているが、これは隣地を時効取得するとの主張ではないため、Xの当事者適格は失われない。

 したがって、裁判所はabcdで囲まれた土地について取得時効の成立を判断しても、Xの当事者適格を認めてcdを筆界とする判決を下すことができる。

2.控訴審における筆界の判断

 筆界確定訴訟というものは公法上の確認訴訟であることから、当事者の主張した筆界についての処分権主義の適用はなく、職権審査主義により審理が行われる。そのため、控訴審においても、処分権主義が妥当しないことから、不利益変更禁止原則も適用がなく、裁判所の心証によって、筆界を認定することができる。

 本件事案において、裁判所はcdを筆界としたにもかかわらずそれよりもYの土地の範囲を狭めるアイの線を筆界としているが、筆界確定訴訟において、不利益変更禁止原則の適用がないことから、このようにより土地の範囲を狭める判断をすることができる。

 したがって、控訴審は筆界をアイであると判断した場合、アイを筆界とする判決を下すことができる。

 以上

 

 メモ

隣地の所有者に当事者適格を認めるべき理由

 時効により当事者適格を失うことを理由として、訴えを却下すると、それまでの審理が無駄になる。

 当事者の主張は審判対象を制約するものでないため、当事者適格をこのような主張にゆだねるべきでない。

 取得時効成立部分について分筆するとしても筆界を確定させる必要がある。

 

筆界確定訴訟で処分権主義が適用されない理由

 客観的に正確な筆界を確定することは公益性の高いものであるため

 筆界が入り組んでいる場合筆界が真に不利益か判断できないため