ロープラクティス商法 問題31

ロープラクティス商法の問題31を解いていきます。

この問題は重要な財産の処分についての問題です。

 

Law Practice 商法〔第4版〕

Law Practice 商法〔第4版〕

  • 作者:黒沼 悦郎
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: 単行本
 

 

 1.会社法362条4項1号によれば、取締役会設置会社において重要な財産の処分を行うためには、取締役会の決議がなければならないとされる。重要な財産に該当するか否かは、総資産額に占める当該財産の価額、財産の使用態様、財産の保有目的などを総合考慮して判断する。

 本件事案におけるA社のYに対して有する賃料債権6000万円というものは、A社の総資産額に対して、5%の割合を占める債権であり、このように債権の保有を行ってきたのは、Y社の財政状況が改善するのを待つためであり、不動産会社であるA社の戦略上重要な財産であったということができる。

 にもかかわらず、本件事案におけるA社は取締役会を開催することなく、X社に本件債権譲渡を行っている。

 そのため、代表権に反した債権譲渡を行っているということができる。

2.このような代表権に反した財産の処分が行われた場合、財産の処分の無効を主張するためには、相手方が故意または重過失により代表権のないことを知っていたということが言えなければならない。

 本件事案において、Xは債権譲渡を受けた当時、A社の財政状況についての調査や、取締役会の許可を受けたかどうか調べるべきであったにもかかわらず、このような調査を一切行っていない。そのため、Yは本件債権譲渡は代表権のないものによって行われた無権代理によるものであると主張することができる。

 しかし、会社法362条4項の事由について取締役会の専任議案としたのは、株式会社保護のためであることから、会社法362条4項違反による代表権の不存在について会社しか主張することはできないと解されている。

 本件事案において、代表権を欠いているのはA社であり、Y社ではないことから、Y社は本件債権譲渡を行う代理権がないことを主張することはできない。