ロープラクティス民事訴訟法 基本問題18

ロープラクティス民事訴訟法の基本問題18を解いていきます。

この問題は釈明義務に関するものです。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 1.民事訴訟法149条1項によれば、裁判所は釈明権を行使することができるとされているものの、裁判所が釈明権を行使しないことが釈明義務違反として違法となる場合があると解されている。釈明権の行使について裁判所に裁量権があることから、原則として、釈明権の不行使が釈明義務違反により違法となることはないものの、当事者が争っている点があり、主張すれば逆転できた場合であり、釈明させないと当事者に不意打ちを与えると考えられるなどの釈明権の不行使が裁判所の裁量権を逸脱する場合には、釈明義務が発生し、裁判所が釈明権を行使しないと釈明義務違反となる場合があると考えられる。

 本件事案において、控訴審裁判所は、当事者に求釈明を行うことなく抵当権順位変更契約書の作成名義人の真正が認められないと判断している。しかし、第一審において、署名の筆跡について筆跡鑑定を行おうとしていたにもかかわらず行われておらず、XYにとって契約書の真正について争う機会がなかったといえる。また、この真正について判断がなされた場合、判決の結果が変わる可能性があったことから、逆転可能性も認められる。さらに、控訴審において、人証の取り調べも行われていることから、裁判所がどのような心証を抱いたか明らかにし、それに関する主張も行われる方が望ましいことから、裁判所に釈明義務が発生していたということができる。

2.にもかかわらず、裁判所は釈明権を行使していないため、裁判所の手続きには釈明義務に違反した違法があるということができる。