ロープラクティス商法 問題36

ロープラクティス商法の問題36を解いていきます。

この問題はインセンティブ報酬についてのものですが、解説が問題に即しておらず、インセンティブ報酬一般の解説になっています(私が使っている第三版では)。なので、とりあえず解答を書いておきます。

 

Law Practice 商法〔第4版〕

Law Practice 商法〔第4版〕

  • 作者:黒沼 悦郎
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: 単行本
 

 

 1.会社法247条1号によれば、株主が不利益を受ける恐れがある場合で募集新株予約権の発行が行われる恐れがあり、新株予約権の発行が違法であるときは募集新株予約権の発行の差し止めを請求することができる。

(1)会社法238条3項1号によれば、募集新株予約権の発行が特に有利な条件による場合に有利発行を行う理由を説明しなければならないとされる。この特に有利な条件とは、著しく低い価格による新株予約権の発行であるということを指す。

 本件事案において、Y社は取締役の報酬の支払いについて金銭の代わりに募集新株予約権の発行を行おうとしている。会社法361条1項4号によれば、取締役の報酬について募集新株予約権の発行をすることができるとされ、この際株主総会決議又は定款の規定が必要であるとされる。本件事案において、Y社は平成28年5月15日の株主総会決議によって取締役の報酬として募集新株予約権の発行を行うことを決定していることから、Y社の募集新株予約権の発行は会社法361条1項4号に基づくものであるといえる。

 また、このように株主総会において、株主は取締役の報酬として募集新株予約権の無償発行を行うことが相当であると判断していることから、取締役の報酬としての無償の新株予約権の発行は相当な価格で行われたということができる。

(2)したがって、本件事案における募集新株予約権の発行は著しく低い価格によって行われたということはできない。

2.したがって、XはY社の募集新株予約権の発行が著しく有利な条件による発行であり、有利発行の際の重要な事実についての説明がないことを理由として会社法247条1号に基づいて新株予約権の発行の差し止めを請求することはできない。