ロープラクティス商法 問題37

ロープラクティス商法の問題37を解いていきます。

この問題は代表取締役の解任に関する問題です。

 

Law Practice 商法〔第4版〕

Law Practice 商法〔第4版〕

  • 作者:黒沼 悦郎
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: 単行本
 

 

 1.会社法362条1項3号によれば、会社の代表取締役の選定及び解任は取締役会によって行われるとされる。そのため、代表取締役の解任を行った取締役会決議が無効となった場合、代表取締役からの解任は無効となると解される。

(1)本件事案において、平成28年9月9日の取締役会の開催に際して、議題として、A銀行からの緊急融資が掲げられていたにもかかわらず、Gが取締役会で代表取締役Xの解任を緊急議題としているが、このような議題の提案が適法か検討する。

 会社法上、取締役の議題提案について株主総会と異なり、規制がされていない。なぜなら、取締役会において自由な提案を行うことにより、会社経営の機動性を確保するためである。そのため、取締役会において、自由に解任について議題の提案を行うことができる。

 本件事案において、Gは議題のA銀行からの緊急融資と異なり、Xの解任を提案しているが、議題の提案を自由に行うことができることから、Gの議題提案について会社法上の違法はない。

 そのため、このことを理由として取締役会決議の無効を主張することはできないといえる。

(2)本件事案における取締役会において、CとXを加えず、Xの代表取締役の解任について過半数の賛成が得られているが、このことが、会社法367条1項に違反しないか検討する。

 会社法369条1項によれば、取締役会決議は議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数によって行うとされる。

 本件事案において、Cが出席していないが、Cが出席しなかったのはインフルエンザに感染していたためであり、議決に加わることができなかったということができる。

 また、Xが取締役会決議から排除されているが、このXは解任対象の代表取締役であることから、会社に忠実に議決権を行使することが期待される者でないことから、会社法369条2項の特別利害関係人に該当する。そのため、取締役会決議から排除したことは適法であるということができる。

 そのため、本件取締役会決議に出席することのできた取締役は5人であるということができ、その中でB,D,Gが賛成していることから、過半数の取締役が賛成しているということができる。

 したがって、Xを代表取締役から解任する決議は会社法369条1項に基づくものであるということができる。

2.したがって、平成28年9月9日の取締役会決議は適法なものであるといえる。よって、Xは取締役会決議が無効であるとして代表取締役の地位確認の訴えを提起することができない。