ロープラクティス商法 問題39

ロープラクティス商法の問題39を解いていきます。

この問題は内部システム構築義務に関するものです。

 

Law Practice 商法〔第4版〕

Law Practice 商法〔第4版〕

  • 作者:黒沼 悦郎
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: 単行本
 

 

 1.会社法423条1項によれば、取締役が任務を懈怠し、それによって損害が発生した場合には損害賠償責任を負うとされる。また、取締役会設置会社の場合、会社法362条4項7号により、内部統制システム構築義務を負うとされる。そのため、Yがこの義務に違反したか検討する。

(1)会社法362条4項7号の内部統制システム構築義務は、内部の違法行為の発見が可能な程度に構築されていなければならないとされる。

 本件事案において、X社内ではソフトウェアの売買を行う場合、A社のB事業部の営業担当が販売会社から得た注文書を社内のCに送付し、C課は受注処理を行ったうえで検収書を作成し、営業担当を通じて販売会社に検収を依頼する。A社のD課の担当者が、エンドユーザーに赴き最終的な検収を行い販売会社からの検収書を受領するとC課が売り上げ処理を行い、財務部に対して売上報告を行う。という方法で、売買が行われたことを確認する内部統制システムが構築されていたということができる。

 そのため、内部統制システム構築義務に違反していないということができる。

(2)内部統制システムの構築がされていたとしても、そのシステムが機能していない場合にも内部遠瀬システム構築義務違反があるとされる。

 本件事案において、B事業部の営業担当が架空の注文書を偽造し、C課が当該注文文書に基づいて検収書を作成する。B事業部の営業担当はC課から受け取った検収書を販売会社に送付せず、検収済みとしてC課に返送し、C課が検収書の偽造に気づかず売り上げ処理を行ったため架空売り上げが発覚していないという事情がある。

 しかし、このように架空売り上げが発覚しなかったのは、B課がC課に売掛金残高の確認を行う場合に、C課からB課が偽造書類を回収していたというためであり、B課が巧妙に偽装を行ったためであり、発見は不可能であったということができる。

 そのため、内部統制システム構築義務違反はないといえる。

2.よって、XはYに対して、会社法362条4項7号違反を理由とする会社法423条1項の損害賠償請求を行うことはできない。

以上