ロープラクティス民事訴訟法 基本問題23

ロープラクティス民事訴訟法の基本問題23を解いていきます。

この問題はルンバール事件をモチーフにした因果関係の証明の程度に関するものです。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 1.民事訴訟法247条によれば、裁判所は判決をするにあたり、自由な心証によって事実認定を行うとされているものの、主要事実について証明があったといえるためには高度の蓋然性が認められなければならないとされる。高度の蓋然性が認められる程度というものは、合理的疑いを容れない程度の証明であることを指す。

 本件事案において、Xは自身に後遺症が残った原因はA病院で実施されたルンバール治療によるものであると主張している。この主張の根拠として、Xの嘔吐、けいれんが発生したのは、ルンバール施術後の15分後であるため、後遺症の原因から間がないと認められる。また、Xにはもともと出血の傾向があり、退院後まで脳出血によるものとして治療されていたこと、さらに、ルンバール施術は長時間行われていたことから、ルンバール施術に医師のミスがありさらに、このミスを認識していたために脳出血が原因として扱っていたと考えられる。そのため、ルンバール施術とXの後遺症との間に因果関係があることが一応証明されている。

 これに対して、YはXの後遺症の原因は化膿性髄膜炎であると反論している。確かに、この症状の場合、同様の後遺症が残ると考えられるものの、化膿性髄膜炎の可能性は通常低く、再燃するような特別の事情もなかったことから、Xの主張する因果関係の主張に対してこのような疑いを容れることは不合理である。

 そのため、合理的疑いを容れない程度にXは因果関係の証明を行ったといえる。

2.したがって、裁判所はXの障害とルンバール施術の間の因果関係を認めることができる。