ロープラクティス民事訴訟法 発展問題11

ロープラクティス民事訴訟法の発展問題11を解いていきます。

この問題は証明妨害に関する問題です。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 1.民事訴訟法224条によれば、文書提出命令に従わなかった場合に従わなかった当事者に訴訟上不利益を課すことができるとされていることから、証拠一般に証明妨害を行った場合には証明妨害を行った当事者に訴訟上不利益を課すことができると解されている。

 ただし、証明妨害を認めるためには、故意または重大な過失により、自身が証明すべき事項の証明を妨害された場合でなければならないとされる。

 本件事案において、Yの代理店は保険料の支払いについて領収書に日付を記載しないことによってXが期間内に保険料を支払った事実を証明できないようにしている。そのため、Xが再抗弁として主張すべき事実である期日内に保険料を支払ったという事実を証明できないようにしているといえる。

  しかし、この領収書に日付が記載されなかったのが過失によるものかYの故意によるものか分からない。そのため、Xの証明妨害の主張は認められない可能性がある。

2.仮に証明妨害が認められる場合、要証事実の内容、妨害された証拠の形態と内容、他の証拠の確保の容易性、経験則などを総合考慮して証明妨害を行った者に不利益を課すとされる。この場合、証明妨害を行った者の相手方の主張の真実性を擬制したり、証明妨害を行った者に証明責任を転換させるなどすることができる。

 本件事案における保険料の弁済の事実はYからの保険料不払いの抗弁に対する重要な事実である。しかし、この証拠はYの側にも領収書などの証拠があると考えられるうえ、このような日付のない領収書を通常は発行しないと考えられる。そのため、Xの主張を真実と擬制するのではなく、Yに証明責任を転換させる方が適切であると考えられる。

 よって、Yの側からXの支払日を証明させることによりXがいつ保険料を支払ったか裁判所に認定させることができるため、証明責任の転換を図ることにより解決することができるといえる。

3.したがって、証明妨害によりYの抗弁を直ちに排斥することはできないものの、Yから支払日についての証明がない限りYの抗弁は認められないということができる。

 以上