ロープラクティス民事訴訟法 発展問題12

ロープラクティス民事訴訟法の発展問題12を解いていきます。

この問題は民事訴訟法上の違法収集証拠排除に関する問題です。判例上ほとんど見られないため、通説のようなものはないと思いますが解いていきます。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 1.民事訴訟法上違法な手段で証拠収集を行った場合、信義則上違法に収集された証拠の証拠能力は否定されると解されている。なぜなら、当事者間で違法に証拠収集を行わないという期待があるからである。

 しかし、あらゆる違法を理由として証拠能力を否定するというのでは適切な訴訟活動が妨げられるため、違法収集証拠であることを理由とする証拠能力の否定を認めるためには重大な違法がなければならないと解されている。

 本件事案において、Xは不貞行為の証明のために、Sが就寝している間にスマートフォンを勝手に閲覧している。このXの行為はSのプライバシーを侵害する行為であるため、違法なものといえる。また、Sのスマートフォンを閲覧した際Sに暴行を加えているため、Sの身体の利益に対する違法な行為であるといえる。しかし、このようなプライバシー侵害行為は刑法犯に当たるなどの重大な違法であるとは言えない。また、Sに対する暴行もスマートフォンを見た後に行っているため違法な証拠収集との因果関係が認められない。そのため、違法の程度は証拠能力を否定するほどのものであるとは言えない。

 したがって、Xの証拠について違法収集証拠であることを理由とする証拠能力の否定は認められない。

2.よって裁判所はこの証拠を利用することができる。

 以上