ロープラクティス民事訴訟法 発展問題13

ロープラクティス民事訴訟法の発展問題13を解いていきます。

この問題は産業廃棄物処理施設の設置許可処分の事例から事案解明義務について検討するものです。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 1.本件事案において、XはYに対して、Bに対する産業廃棄物処理施設の設置が違法であることを理由として産業廃棄物処理施設の設置許可処分の取り消しを求めている。このような行政処分の取り消しを求める場合、原告であるXは行政処分の違法一般の存在についての主張を行わなければならず、この行政処分の違法一般についての証明責任を負っている。

2.証明責任を負う事実についての証拠が証明責任を負う者の管理下になく、証拠が管理下にないことについて原告に帰責性がなく、証明責任を負う事実が重要であり、証明責任を負わない当事者から事実の主張を行う期待可能性がある場合、当事者の公平を図るために証明責任を負わない当事者に事案解明義務を課すことができるとされる。

 事案解明義務とは、証明責任を負わない当事者にひとまずの否認をさせる義務である。この義務に違反した場合、不利益な事実が一応推認される。

 本件事案における設置許可に関する証拠というものはYに設置許可証などがあると考えられるため、Yから提出させることが容易なものであり、Yが主張する期待可能性もあるということができる。さらに、この設置許可処分の違法というものは立証するうえで重要なものということができる。

 しかし、環境被害の状況などはXが証拠を収集して主張することができると考えられるため、証拠が証明責任を負う者の管理下にないということはできない。さらに、環境被害状況についてXの側からも証拠収集ができることからすると、Xに帰責性がないとは言えない。

 そのため、Yに事案解明義務を課することはできない。

3.よって、裁判所はYに対して処分が違法でなかったことを主張・立証させることはできない。

 以上