ロープラクティス民事訴訟法 基本問題30

ロープラクティス民事訴訟法の基本問題30を解いていきます。

この問題は証拠保全に関する問題です。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 1.民事訴訟法234条に基づいて証拠保全を行うためには、あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情が認められなければならないと規定されている。

 この証拠を使用することが困難となる事情というものは証拠の破棄、隠匿などの抽象的な可能性ではなく、証拠の破棄、隠匿などの相当程度の恐れがなければならないとされる。そのため、証拠保全申し立てを行うためには、この証拠の破棄、隠匿などの相当程度の恐れを疎明しなければならないとされる。

 本件事案において、XはYに対してAの死亡を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求を行っている。この証拠として、XはAの診療記録を必要としているのであるが、YはAの死亡は不可抗力によるものであるため、Yの手術とAの死亡との間には因果関係がないと争っている。そのため、Yは診療記録を隠匿するおそれが抽象的にあるということができるものの、Yがこれまで診療記録を隠匿したり、Xに対して背信行為を行ったというような事情はないため、証拠の破棄、隠匿の相当程度の恐れがあるということはできない。

2.そのため、Xは民事訴訟法234条に基づいて証拠保全の申し立てを行うことはできない。

 以上