ロープラクティス商法 問題43

ロープラクティス商法の問題43を解いていきます。

この問題は会社の第三者に対する損害賠償請求に関する問題ですが、間接損害か直接損害か分けて考える問題となっています。

Law Practice 商法〔第4版〕

Law Practice 商法〔第4版〕

  • 作者:黒沼 悦郎
  • 発売日: 2020/03/19
  • メディア: 単行本
 

 

 1.X1のY1,Y2に対する責任追及

(1)会社法429条1項によれば、取締役が悪意又は重過失により任務を懈怠し、そのことにより第三者に損害を与えた場合には会社は取締役に対して損害賠償請求をこなうことができるとされる。

 本件事案において、X1は債務不履行を理由としてA社との請負契約を解除しているが、この際、500万円の支払いを受けることができなくなったことにより損害が生じている。

 このようにX1が500万円お支払いを受けることができなくなったのは、A社取締役らが住宅需要の予測をして注文を請け負うべきであるにもかかわらず、この義務を怠り、とにかく受注件数を増やしたためである。これによって、A社の資金繰りが悪化し、X1に損害を与えていることから、この損害は直接損害であるということができる。

 直接損害の場合、取締役の損害賠償請求を認めるためには、故意または重過失があればよいことになる。本件事案において、Y1は住宅需要が減少していることを認識していたのであることから、故意にこの義務を怠ったということができる。

 したがって、X1はYらに対して会社法429条1項に基づく損害賠償請求を行うことができる。

(2)次に、Y2はA社の取締役であり、財務部長であったのであるから、会社法362条2項2号上他の取締役に対する監視義務があり、Aの財務状況を基にY1を監視し経営方針の変更を迫る義務があったということができる。

 にもかかわらず、Y2はこのような対応を行っていないのであるから、Y2には任務懈怠があるということができる。また、Y2は経営状況の悪化や住宅需要の減少を認識していたのであるから、故意に任務懈怠行為を怠ったということができる。

 このことによりX1に500万円の損害が発生している。

(3)そのため、X1はY1、Y2に対して会社法429条1項に基づく損害賠償請求をすることができる。

2.X2のY1、Y2に対する損害賠償請求

(1)会社法429条1項によれば、取締役が故意または重過失により任務を懈怠し、そのことにより第三者に損害を与えた場合には取締役は損害賠償責任を負うとされる。

 本件事案において、X2は5000万円の売掛金の回収ができなくなったという損害が発生しているが、これはA社の経営状況が悪化したことによるものであるため、間接損害であるということができる。

 そのため、故意に損害を与えたといえる場合に限定される。

 本件事案において、Y1は住宅需要などの経済状況を把握する義務を有しているにもかかわらず、住宅需要が減少しているという経済状況を把握したうえで故意に受注を増やしているため、故意に任務を懈怠したということができる。

 そのため、Y1は会社法429条1項の損害賠償責任を負う。

(2)Y2はY1に対して会社法362条2項2号上他の取締役に対する監視義務を負っているとされる。そのため、Y1が経済状況、経営状況を無視した経営を行っている場合に経営方針を変更するよう進言する義務があったということができる。にもかかわらず、Y1が無理な経営を行っていることを認識していながら故意に経営方針の変更を迫るよう進言しなかったということができる。

 そのため、Y2は故意に任務を懈怠したということができ、これによって、X2が損害を被ったということができる。

(3)そのため、X2はY1、Y2に対して損害賠償請求をすることができる。

 以上