ロープラクティス民事訴訟法 発展問題14

ロープラクティス民事訴訟法の発展問題14を解いていきます。

この問題は既判力の客観的範囲に関する問題ですが、この問題は過去に司法試験に出たことがあります。

 

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕

  • 作者:山本 和彦
  • 発売日: 2018/01/11
  • メディア: 単行本
 

 

 1.民事訴訟法114条1項によれば、既判力は主文に包含するものに限り発生するとされる。

 本件事案の前訴において、X1はYに対して、①甲土地についての所有権確認の訴えと②甲土地についての所有権移転登記手続請求をしている。これらの請求について裁判所はX1の請求を棄却しているのであることから、①X1に甲土地の所有権が認められないこと、②X1は甲土地の所有権移転登記手続きを行うことができないことについて既判力が発生しているということができる。

 既判力が作用する対象の訴訟物は前訴と同一、先決、矛盾関係にある訴訟物であるとされる。本件事案の後訴において、X1は①甲土地がAの遺産に属することの確認の訴えと②X1の共有持分権に基づく所有権移転登記手続き請求を行っている。

 このうち①については遺産確認の訴えであり甲土地の所有権に関する紛争とは無関係であることから同一、先決、矛盾関係にある訴訟物であるとは言えない。ただし、②については、X1の共有持分権というものはX1の所有権に包含される権利であることから、同一関係にあるということができる。

 そのため、①について既判力は作用しないが、②については既判力が作用しうる。

 既判力が作用するためには、判決同士が矛盾するおそれがあると認められなければならない。本件事案において、X1の共有持分権に基づく所有権移転登記請求が認められた場合、裁判所が前訴でX1の移転登記手続き請求一切を認めない判断をしたことと矛盾するため、判決同士の矛盾のおそれが生じている。

 そのため、後訴のX1の共有持分権に基づく所有権移転登記手続き請求は既判力の作用により遮断され、X1の訴えは棄却される。

 2.したがって、後訴のX1の請求に対し前訴判決の既判力は及ぶ。

 以上