令和3年司法試験の感想

令和3年の司法試験を受けた感想を書いていきます。

 

司法試験・予備試験 この勉強法がすごい!
 

 

 

選択科目(知的財産法)

特許法は均等侵害、特許権の消尽、間接侵害、損害額の認定に関する問題でした。

特許法に関する部分はかなり典型的な内容の出題になっていたと思います。ただ、損害額の認定の部分については、学習が足りなかった分きちんとは書けていないように思えます。

著作権法は写真の著作権、著作者の認定、頒布権の消尽、著作者人格権に関する問題でした。

このうち、頒布権の消尽については、設問2(2)で発展問題が出されています。この割賦販売方法の場合に貸与権侵害類似と認定していいのか、この場合に消尽させて良いのかという悩みはありました。

また、設問3は著作者人格権に関する問題ですが、この場合に著作者人格権を行使させて良いか、著作者人格権の行使が権利の濫用とならないかを検討するべき問題であるように感じました。

憲法

メインは集会の事由に関するものであると考えられます。ただ、プライバシー権に関する議論が付随して出題されているのだと思います。

そのため、規制①ではマスクの着用を禁止する規制は広範ゆえに違憲であることと、マスク着用の禁止がプライバシー権から派生して保護されるマスク着用の事由を制約していることにより違憲であるといえればよいのではないかと考えられます。

規制②では構成員の範囲が分からない不明確であるから明確性の原則に違反するという主張もできなくはないと思うのですが、出題の中でこれについて論じる必要はないとされていることから、これを書くのは時間の無駄なのでしょう。そのため、団体の情報を提供させる行為がプライバシー侵害に当たらないか、集会の事由に対する間接的制約になり違憲とならないかを検討しました。

これだけ書いておくといいように思えます。あとは、情報提供の義務付けは憲法19条の思想信条の自由の侵害という主張をしておくとよいのかなあとは思います。

行政法

全体的に難しかったです。

設問1(1)は処分性に関する問題ですが、市道占有許可を受けるための市の認定とは何なのかを考えると、処分性がないのではないかと思いここで処分性を否定しました。

設問1(2)は訴えの利益に関する問題ですが、この問題の事例は東京12チャンネル事件とは違い、1対1の競願者にあるのではなく、20区画の者に対してのものであると考えると、Cに対する処分を取り消せばBに対する処分についての救済を得られるわけではない。そのため、訴えの利益はないのではないかと思わずにはいられませんでした。

設問2が一番の難問でした。基本的には本件不選定決定の裁量権の逸脱を争えばいいと考えられます。ただし、行政手続法に関わる部分もあり、しかも群馬中央バス事件の判示を利用していることに気づかず間違えた回答をしてしまったように思えます。

民法

設問1は即時取得と盗品の回復請求に関する問題です。即時取得の成否に関しては善意無過失で取得したなどの抗弁の部分を含めて書くべきなのかなと判断しています。

請求2の使用料相当額に関しては、平成12年判例の判示を誤って理解していたため、使用料相当額部分について不当利得返還請求により認められると書いてしまいました。

設問2は委任契約に関する問題です。小問(1)で委任契約の性質に触れつつ、他の役務提供契約でないことを示しておくとよいのではないでしょうか?小問(2)で委任契約であることを前提としつつ、委任契約の解除を理由とする損害賠償請求について書くとよいと考えられます。ここは不法行為や、債務不履行に基づくものではないと個人的には考えています。

設問3はいろいろと時間がなかったうえ、売買代金100万円に関する主張がどういう意味なのか4、5分考えることになってしまいました。小問(1)の拒む主張はいくつか考えられます。私が思いついたのは、消滅時効と主債務者の相殺の抗弁の援用です。小問(2)の求償権については免除したという性質をどう考えるか悩みました。また、300万円に変更された点について300万円の債権として求償すべきなのか、500万円の債権として求償すべきなのかを書いて、(私は思いつきませんでしたが)委託を受け退任と受けていない委任との区別をつけたうえで求償権の範囲を考えればよかったのではないでしょうか?

商法

設問1は重要な財産の処分と利益相反に関する問題でした。自分は利益相反の主張を思いつかなかったので減点されていると思います。

設問2は株主の認定に関する問題です。個人的にこの問題は直前に最新の重判を確認しておいてよかったと感じています。株式の対価を支払ったのが誰であるかということが重要であるというのを分かっていればよいと思います。

設問3は議決権の代理行使に関する問題です。株主以外の者に代理権を与えてもよいのはなぜか、代理行使が二重に行われた場合どちらを代理行使したものと認定すればよいか考えておくだけで十分なのではないでしょうか?あとは、提訴機関と裁量棄却を忘れないようにしておけば。

民事訴訟

設問1は引換給付判決と処分権主義に関する問題です。課題1に関して、引換給付判決をすることができない場合にすべき判決というのがよくわかりませんでした。自分としてはここは給付判決をすべきという形で書きました。そのうえで、引換給付判決は当事者の求めた請求より少ないものという形で論じていきました。

課題2に関しては引換給付判決と処分権主義に関する問題の発展問題です。場合によっては特に今回の場合のように立退料を少なくしてもよいと考える原告の場合には申し立て額よりも少ない立退料を認定してもよいという風に書きました。

設問2はロープラクティスで散々苦しめられた当事者の承継に関する問題です。これは紛争の主体たる地位の承継があったかを基準とすると書いて、新たに建物を賃借したZはこの紛争の主体たる地位を承継していないと書いておけばいいのではないでしょうか?もっとも、この場合でも紛争の主体たる地位を承継したと書く余地はあるような気もしますが。

設問3は時機に後れた攻撃防御方法の提出に関する問題です。Yについては通常通り書けばよいのですが、Zに関してはYと同様に徒はいけないように思えます。なぜなら、Yと比べて証拠収集に難があると考えられるからです。これを書いておけばよいのではないでしょうか?

刑法

設問1は強盗か窃盗か、丙に関しては横領かを区別して共犯関係を認定するとよい問題であると考えます。強盗と認定するためには丙に対する脅迫がない、横領と認定するためには丙が店内の腕時計について占有権限を有していないとのことから、窃盗であると認定し、甲と丙を共同正犯、乙を甲に対する幇助犯と認定すればよいのではないでしょうか?

設問2はついに出ました同時傷害の特例。小問(1)で因果関係がないこと、共犯から離脱したことを甲側の主張として書いておき、小問(2)で因果関係がないとの主張に対して同時傷害の特例、共犯から離脱したとの主張に対して因果性が継続しているとの認定を書いておけばよいのではないでしょうか?

刑事訴訟法

これが悪魔のささやきかというのを思い知らされました。

設問1下線部①では捜索差押許可状の令状に記載された物の範囲を認定するとよいように思います。下線部②については蓋然性の問題と確認することなく差し押さえることについて必要な処分といえるかという認定をすればよいのだと思います。ついでに還付手続きが予定されていることも書いておくよ良いのではないでしょうか?

設問2小問1は本件メモ1を利用して共謀を行ったという物証としてのメモの利用に関する問題です。そのため、メモを見せたということが重要なのですが、何を思ったかメモが作成された時間とV宅に電話がかけられた時間を比較して見てメモが作成されたのが後であることから、物証としての利用ができない、そのため、伝聞証拠として利用するほかないと書いてしまいました。試験会場には悪魔が居ました。

小問2はこれは本件メモ2を伝聞証拠として利用しているため、伝聞例外の認定が重要になります。特に供述不能要件について詳しく書いておくとよいのではないでしょうか?

短答

今年は難しくなかったのか、自分の能力が向上したのかわかりませんが140点を取れました。