ロープラクティス民法Ⅰ第2問

ロープラクティス民法Ⅰの第2問を解いていきます。

この問題は高齢者の制限行為能力に関する問題です。

1.XはYに対して賃貸借契約の予約の特約に基づき、損害賠償請求を行おうとしているが、この請求が認められるか検討する。

(1)XがYに対して損害賠償請求を行うためには、本契約ができなかったことと、XY間で賃貸借契約の予約が成立したことが認められなければならない。

(2)本件事案において、AはXに対して本契約を拒否しているため、Xは本契約をすることができなくなったということができる。

 XはAとの間で間の賃貸借契約を締約しているが、この際、AはYの代理人であると名乗っているものの、YはAに代理権を与えていない。そのため、Aが民法99条1項の代理人であることを理由にYに賃貸借契約の予約の効力を帰属させることはできない。

 次に、民法109条1項の表見代理の主張も考えられるものの、民法109条1項の表見代理が成立するためには、第三者に対して他人に代理権を与えた旨の表示を行ったこと、その代理権の範囲内で契約を締約したこと、代理権を与えられていないことを知らなかったことが認められなければならない。しかし、本件事案において、YはAを後見人にしたと述べたりするなどAに対して代理権を与えた旨の表示を行っていない。そのため、民法109条1項の表見代理も成立しない。

 よって、AX間の契約はYに効果の帰属しない無権代理によるものであるということができる。

(3)Xは、Aが民法116条の追認拒絶をすることはできないと主張することが考えられる。

 無権代理行為を行った者が民法7条の後見開始の審判により、本人の法定代理人になることが考えられる。この場合確かに法定代理人として民法116条の追認拒絶を行うことができるものの、無権代理行為を作出したのは法定代理人であり、契約が締約されたとの外観を与えているため、信義則上民法116条の追認拒絶はできない。

 本件事案において、Aは無権代理人であり、Xとの間でYの代理人であるとの顕名をしたうえで賃貸借契約の予約を行っている。その後、Yに後見開始の審判がされたことにより、Aが法定代理人に選任され、XY間の賃貸借契約の予約について追認拒絶を行っている。しかし、このYの無権代理行為の相手方となったのはAであり、XにはXY間の賃貸借契約の予約が成立したとの信頼があるため、これを裏切り追認拒絶することは信義則上できない。

 そのため、AはXY間の賃貸借契約の予約について追認拒絶することができず、XはYに対して3000万円の損害賠償請求を賃貸借契約の予約の特約に基づきすることができる。

2.よって、XのYに対する3000万円の損害賠償請求は認められる。