令和3年司法試験再現答案民事訴訟法

令和3年司法試験民事訴訟法の再現答案を上げておきます。

これはD評価でした。

 

設問1

第一.課題1

1.請求原因事実が認められるものの、引換給付判決が認められないとすると、引換給付の条件を付さない判決すなわち給付判決をすることになる。

 そのため、本件事案において、XはYに対して本件建物の収去及び本件土地を明け渡せという給付判決をすることになる。

2.民事訴訟法246条によれば、判決事項は当事者が申し立てた範囲内に限定されることから、質的、量的に原告の請求の範囲内にあるということがいえなければならない。

 本件事案において、裁判所はXが「Yは、Xから1000万円の支払いを受けるのと引き換えに、Xに対し本件建物を収去して本件土地を明け渡せ」と請求しているにもかかわらず、立退料を増額させて判断しようとしているが、これはXの請求よりXに質的に不利になる判断であるため、Xの請求の範囲内であるということができる。

 したがって、裁判所は民事訴訟法246条に違反することなくXの申し出額と格段の相違のない範囲を超えて増額した立退料の支払との引換給付判決を下すことができる。

第二.課題2

1.民事訴訟法246条によれば、裁判所は当事者が申し立てていない事項について判決することができないとされていることから、判決事項は原告の請求の範囲内に限定される。

 本件事案において、原告であるXは1000万円の支払と引き換えを条件とする建物収去土地明渡請求に対して、裁判所はこの立退料1000万円を減額して判断しようとしているが、これは、Xの請求よりも有利になるため、当事者が申し立てていない事項について裁判所が判断することになる。

そのため、立退料を原告の請求より減額することは民事訴訟法246条に違反するということができそうである。

しかし、本件事案の経緯をみると、Xは口頭弁論において1000万円より少ない額で構わないことを申し出ているため、立退料を減額した判断はYにとって不意打ちとならず、立退料を減額した判断は民事訴訟法246条に違反しないということができる。

2.したがって、本件事案において、裁判所はXの申出額より少ない額の立退料による引換給付判決をすることができる。

設問2

1.民事訴訟法50条1項によれば、訴訟係属中第三者がその訴訟の目的である義務の全部または一部を承継した場合、その者に訴訟を引受けさせることができるとされている。この「訴訟の目的である義務」とは紛争の主体たる地位のことを指すと考えられる。

 本件事案において、XはYを被告とするのではなく本件建物の賃借人であるZを被告としようとしている。しかし、Zは本件建物から退去する義務があっても、本件建物を収去する義務がなく、本件土地について争う紛争の主体たる地位を有していないと考えられる。

 そのため、Zは訴訟の目的である義務を承継した者ということはできない。

2.したがって、ZにYの訴訟を承継したということはできない。

設問3

第一.課題1

1.民事訴訟法157条によれば、当事者が故意または過失により時機に後れて提出した攻撃又は防御方法については訴訟の完結を遅延させることとなる場合却下されるとされる。

 本件事案において、XとYは更新拒絶の正当事由があるかどうかを争っており、口頭弁論期日の終結が予定される最終期日に本件契約の権利金として振り込まれた本件通帳を更新拒絶に正当事由があると評価されることを妨げる証拠として提出している。このように、提出が遅れたのは、レストラン経営に関する事情を調査すべきであるにもかかわらず調査しなかったためである。そのため、Yは過失により更新拒絶の正当事由があるかどうかを基礎づける事情、主要事実の主張を時機に後れて提出したということができる。

 また、このように口頭弁論終結直前に主要事実に関する証拠が提出されると、元となる事情についてさらに審理を尽くさなければならなくなる。本件事案においては、本件通帳に記載された1500万円についてこれが更新料として振り込まれたか否かということについての審理や、Aの証言などについて調査しなければならないことから、訴訟の完結が遅延されることになる。

2.したがって、本件新主張は民事訴訟法157条により時機に後れた攻撃防御方法として却下される。

第2.課題2

1.民事訴訟法50条により訴訟引受を行った者は引受前の者の地位を承継することから、時機に後れた攻撃防御方法についても引受前の者の地位をもとに判断するとされる。

 本件事案において、ZはYより訴訟引受を行い、Yの地位を承継していることから、Yと同様に先述の通り民事訴訟法157条に規定される時機に後れた攻撃防御方法として却下されると解される。

 しかし、承継人が引受前の事情について知ることは困難であり、また、承継人に争う余地を与えなければ承継人に不意打ちとなる判断をするおそれがあるため、承継人が新たな証拠を発見した場合、その証拠の提出については時機に後れた攻撃防御方法とはならないと解される。

 本件事案において、ZはL弁護士を立てて、本件レストラン経営について調べていたところ更新料を支払ったという証拠となる本件通帳を発見していることから、新たな証拠を発見したということができる。また、この証拠について、提出の機会を与えず結審させるとZにとって不意打ちとなることから、Zによる本件新主張は時機に後れた攻撃防御方法の提出とはならない。

2.したがって、Zによる本件新主張は民事訴訟法157条の時機に後れた攻撃防御方法として却下されないと解される。