令和3年司法試験再現答案知的財産法第二問

令和3年司法試験知的財産法第二問の著作権法の再現答案を上げておきます。

これは特許法と合わせて48点でした。

 

設問1

1.丙の写真が著作権法2条1項1号の著作物に当たるといえなければならないが、写真は写真の構図、採光、露光、シャッタースピード等を調節して思想又は感情を創作的に表現することができる美術であるため、丙の写真は著作権法2条1項1号の著作物に当たるということができる。

 次に、Aが著作者であるといえるためには、丙の写真は著作権法15条1項の職務著作に該当するといえなければならない。著作権法15条の職務著作に該当するといえるためには、法人又はその他使用者の発意に基づき、法人の業務に従事する者が職務上作成し、法人等の名義のもと公表されたといえなければならない。本件事案において、丙はA社に指示されて写真撮影を行っていることから、法人の発意に基づくものといえる。丙はA社の従業員であったことから、法人の業務に従事する者ということができる。また、丙が写真撮影を行ったのは業務時間内であることから、職務上撮影したということができる。さらに、ゲームで丙の写真が利用され、公表もされていることから、法人の名義のもと公表されたということができる。したがって、職務著作として著作権法15条1項に基づき写真の著作権はAに帰属する。

 著作権侵害があったといえるためには、著作物の創作的部分に対して依拠して権利侵害行為を行ったといえなければならない。本件事案において、丙はAが著作者である写真をホームページ上で販売することにより、不特定又は多数人に対して公衆からの求めに応じて送信を自動的に行うことを可能としていることから、Aが著作権を有する写真の創作的部分に依拠して、著作権法23条1項の公衆送信権を侵害したということができる。

 したがって、Aは丙に対して著作権法112条1項の差し止め請求及び民法709条に基づく損害賠償請求をすることができる。

設問2小問(1)

1.著作権侵害が認められるためには、著作物の創作的部分に対して依拠して権利侵害行為を行ったと認められなければならない。

 αはA社において制作されたゲームソフトであるため、A社が著作権者であるということが認められる。

 また、Bの販売するゲームソフトはαと同一のものであるため、αに依拠しており、著作物の創作的部分に対しての行為であると認められる。

 著作権法26条の2第2項は映画の著作物の譲渡権を保障しており、αは視聴覚的作用により表現されるものであることから、映画の著作物に当たり、Bはαを販売することによりAの譲渡権を侵害しているということができる。

 しかし、著作物についても二重の利得の機会を著作者に与える必要がないこと、取引の安全性を図る必要があることから、著作権者や適法に著作物を利用する権利を有する者から譲渡を受けた著作物に対して著作権の消尽を主張することができる。確かに、著作権法26条の2第2項上映画の著作物について消尽はしないとされているものの、ビデオゲームなどのパッケージ作品については店頭に並ぶことにより利得の機会が確保されているため、著作権は消尽すると解されている。

 本件事案において、Bは中古ゲームソフトを販売しているが、中古ゲームソフトとは消費者が店頭で適法に購入したゲームソフトを再び販売するもので、消費者が店頭で購入した段階で著作権は消滅している。

 そのため、AはBに対して譲渡権侵害を理由として、販売の差し止めを請求することができない。

設問2小問(2)

1.AはBに対して割賦販売サービスがαの著作権を侵害していると主張するため、検討する。

 著作権侵害を理由として差し止め請求を行うためには著作物であると認められること著作物に依拠して、著作物の創作的部分に対して、著作権侵害行為を行ったことが認められなければならない。

 αは著作物であり、Bはαに依拠して、創作的部分に対して行為を行っていることが認められる。本件事案における割賦販売サービスとは販売価格の一部を払った段階で買主に引き渡し、残金を支払わせるというものであることから、この割賦販売サービスは買主に所有権を移転させるものであるということができる。そのため、著作権法26条の2第2項の譲渡を行ったということができる。

2.そのため、BはAの譲渡権侵害行為を行っているものの、先述のとおり著作権は消尽しているため、AはBに対して差し止め請求を行うことはできない。

設問3

1.著作権法20条1項によれば、同一性保持権侵害とは意に反する改変のことを指すと解される。本件事案において、丁は乙の意に反してβの編曲を行うことによってβを改変しているため、丁は同一性保持権侵害行為を行ったということができる。

2.Aと乙との間でβの著作権について二次的著作物の利用に関する権利も含めて譲渡されているため、丁もこれを利用して同一性保持権侵害の主張を拒むことができるのではないかと考えられる。

 しかし、著作権著作者人格権は異なる権利のため、著作権の譲渡を行ったとしても、著作者人格権は譲渡されていない。そのため、丁は乙の請求を拒むことはできない。

3.乙の著作者人格権の行使は信義則違反に当たると主張することも考えられるため検討する。乙はAに対して著作権の譲渡を行ったため、Aによる改変については認容しているものと解される。にもかかわらず、Aから編曲を依頼された丁に対して改変を拒むような主張を行っている。そのため、乙はAの著作者人格権を含めた著作権を行使しないという信頼を裏切り、著作者人格権の主張をしてきたものということができる。

 よって、乙は丁に対してβの改変による同一性保持権侵害を理由として損害賠償請求をすることはできない。