『モチベーションの心理学』を読みました

鹿毛雅治著『モチベーションの心理学』を読みました。

心理学的な「やる気」について気になったので読んでみました。この本はやる気とは何か、やる気を上げる、下げるために何をすればよいか考えるうえで参考になったので紹介します。

 

 この本において、「やる気」、「意欲」をそれぞれ、特定の行動を引き起こす原動力、「やりたい」という強い願望を原動力として最後までやり抜こうとする心理現象と定義したうえで、それを実際にやってみるという「動き」をモチベーションととらえることで、何かをさせる、何かをさせないよう促すためにはどういう誘因を出したらよいかというこれまでの心理学的な分析をまとめています。

 この誘因として、「目標」、「自信」、「成長」、「無意識(習慣)」、「環境」を上げたうえで、これらをモチベーションの原因とすることの長所と短所を検討しています。

 個人的にはやる気を出すためには報酬が重要ではないかと思ったのですが、報酬では、報酬が出なくなった場合や課題が難しくなった場合にやる気をなくさせる原因になり逆効果となると分析されており、この観点は新たな視点を与えてくれたのではないかと思いました。

 というのも、特許法的には発明を促すために特許権という報酬を与えて発明を起こさせるという考え方があり、この特許権によって世の中の発明家は新たな発明をたくさん生み出していくものだと思っていました。

 しかし、心理学上、特許権がこのような物として機能しているならば、今すぐは金にならない難しい発明をできないようにしているのではないかと考えられ、むしろ重要な発明をさせないようにするために機能してしまっているのではないかと考えさせられました。

 これ以外の部分としても、罰を与えること、罰を厳しくすることは何かをさせないための手法として用いられるけれども、望ましくない手法であると心理学的に分析されており、現在言われているような侮辱罪の厳罰化には果たして誹謗中傷をやめさせる効果よりも弊害が大きいのではないかということや、そもそも法律によって人に何かをさせるというだけでなく、法律以外の習慣化やデザインされた環境によって望ましい行動をさせたり、望ましくない行動をさせなかったりできるのではないかそうだとすれば、法律は万能ではないのではないかと思えました。

 ただし、この本では短所がないモチベーションをもたらす原因がこれであるとの分析はされておらず、モチベーションを上げる最高の手段はまだ心理学的にも分析の途中にあるようです。そのため、我々はやる気を上げるためにこの本に書かれている者や、それ以外の様々な手法を試していかなければならないようです。

 ほめることだけが人にやる気を出させる最適解ではないのです。