川崎直宏著『これからの住まい』を読みました

川崎直宏著『これからの住まい』(岩波新書)を読みました。

住宅政策について興味がわいたため読んでみました。

 

 この本は、戦後のこれまでの住宅に関する政策の変遷を説明するとともに、これからの住宅政策をどのようにするのか説明する本です。

 戦後の住宅に関する政策は、①「官」から「民」へ、②「つくる」から「つかう」へ、③「所有」から「利用」へ、④「住まい」から「暮らし」へ、⑤「在宅」から「地域」への5つが起こっていることが説明されています。この際に、戦後住宅に関連してどのような法律(たとえば、借地借家法)が定められたのかが説明されており、住宅関連法規についての索引として使う意味でも非常に参考になる内容になっていました。

 これらの、住宅に関する政策を概観する限り、グローバル化、市場の自由化を目指す過程で、政策が上手くいかず、結局住宅に関する問題を発生させているため、日本の住宅に関する政策は、全体的にうまくいかなかったのではないかと考えさせられました。例えば、分譲マンションについては、「つくる」とか「所有する」という観点から70年代、80年代に建てられ、老朽化して、建て替えが必要になっても、マンション管理組合の集会で建て替え決議を行わなければならないため、建て替えを行うための意思決定が難しく、分譲マンションの建て替えが決まった例が非常に少ないという問題が生じており、区分所有法上も未だ解決策を講じることができずにいるという問題があります。

 また、作者は、これからの住まいについては「ハウジング・スモールネス」を実現するため、地域力の醸成と「地域住居政策」への取り組みが一層重要性を増してくると論じています。今後の日本の住宅に関しては、地域との関係が大事になってくると思いますし、これを論じたことに意味があるのだと思います。

 しかし、私がこの本を読む限り、肝心の「ハウジング・スモールネス」という言葉の定義がよくわからず、結局将来どういう方向で住環境政策を行うのか分からないものとなっています。

確かに、はじめにの部分で

 本書の主題である、これからの住まいや街づくりに照らしてみると、住居関連ビジネスは住宅の供給にとどまらず、住宅の診断、保守、メンテナンス等の管理ビジネス、リフォームや住宅としての資産活用、住宅関連相談や住宅のあっせん・流通支援、住居支援サービス・生活支援サービス、セキュリティや街の管理などが施行されています。これらは、多角的かつ総合的に展開する地域の総合的住居ビジネスとして構築され、地域の居住を支える事業者や、住まい手やまちの様々な活動や居住に関わる人たちと協働してより豊かな生活を目指していく身近な地域ビジネスや活動に支えられた態様として考えていく必要があります。

 ここではその概念を「ハウジング・スモールネス」として表現しました。

(はじめに ⅲ頁)

とあるのですが、結局「ハウジング・スモールネス」の定義になっておらず、この部分を読んでもどのようなものなのかさっぱりわかりませんでした。

ただ、あとで

 ここではこうした地域ごとに展開する住居関連産業の包括的概念を「ハウジング・スモールネス」と表現したいと思います。

(終章 199頁)

と記されています。

 そのため、そもそもどのような内容なのか、最初から終章と同じ定義を使っているのか、はじめにとは違う定義で使っているのか分かりにくい観念で、悩ましい部分として残ってしまいました。(終章に書かれている方がこの本全体の定義なのかな?善解して読む限りそういう定義っぽい)

 なので、私が得たものとしては、これまでの住宅政策に関する政策、それに関連した法律の概要をつかむことができた点で非常に実りのある内容になっていたのではないかと思います。