江川紹子著『「カルト」はすぐ隣に』を読みました

江川紹子著『「カルト」はすぐ隣に―オウムに引き寄せられた若者たち』(岩波ジュニア新書)を読みました。

昨今、統一協会、カルト問題が話題になっているため、読んでみました。

 

 この本は、オウム真理教の各種事件が起こっていた時からオウム真理教の違法行為について取材していたジャーナリストによって書かれた本で、オウム真理教とはどのような宗教なのか、オウム真理教はどのような事件を起こしたのか、オウム真理教に絡んだ人物とはどのような人だったのか、カルトに引き寄せられないためには何をすればよいかを若い人に向けて説明した本です。

 「若い人」として、この本は主にオウム真理教を知らない高校生に向けて書いた本だとは思うのですが、オウム真理教の各事件というものは、1994年、1995年と約30年も前に起こっています。20代でも、もしかすると、30代でも知らない人が居るため、30代の大人であっても「若い人」として読んでほしい一冊になっています。

 かくいう、私、法科の趣味人もオウム真理教事件については本を読むなどするまで何があったのか知りませんでした。なので、この本の内容について、初めて知ったという話も多くあります。

 例えば、オウム真理教の教祖、麻原彰晃(松本智津夫)は教団の信者が悩みを打ち明ける瞬間に非常にやさしくなること、悩みをよく聞くことそれによって、信者の信頼を獲得していったということは初めて知りました。個人的なイメージとしては、信者に対しても冷徹で暴力をふるう人物と思っていたからです(このイメージも間違っていないことは、この本の中に出てきます。麻原(松本)はそういう面も持ち合わせていたようです。)。

 また、この本の中では、「カルト」というものはどのようなものなのかという定義も書かれています。

 それによれば、

宗教に限らず、何らかの強固な信念を共有し、それを熱烈に支持し、行動する集団

を指すと定義しています。

 そのため、学生が巻き込まれがちな自己啓発セミナーや、霊感商法などの悪徳商法を行う統一協会もこの定義に当てはまることになります(熱烈な指導を行う学習塾、予備校もそうじゃないかという疑問は出ないわけではないのですが…)。

 そのような「カルト」に巻き込まれないためにはどのようにすればよいのかとして、唯一の答えはこの本には書かれていません。というのも、この本では、人の悩みに付け込んでカルトというものは人に入り込んでくるため、カルトに巻き込まれるというのは、いわば「交通事故」のようなものであると論じられているからです。

 しかし、「交通事故」と同じようにいくつかの予防策は示されています。①お金の話が出ていないか確認すること、②話が最初と違っていたり、何かのウソが含まれている場合、③「これは誰にも言っちゃいけない」などと秘密を守らせようとしている場合など、気づく要素はあると書かれています。

 そのため、これらの要素から、カルトを察知して身を守るのに役立ててほしいです。これらの要素は、オウム真理教だけではなく、統一協会、カルト的な自己啓発セミナーにも当てはまり、これらに注意を向けるという場合でも役に立つのではないかと思います。

 オウム真理教事件は若い人が知らなければならない、学ばなければならない歴史ではないかと思われます。