岩崎徹著『馬産地80話 日高から見た日本競馬』を読みました

岩崎徹著『馬産地80話 日高から見た日本競馬』(北海道大学出版会)を読みました。

馬産、競走馬取引に関わる商慣習に興味があったので読んでみました。

 

 この本は日高地方を中心とした競走馬生産と馬産地の仕組みを80個のお話で解説した本です。ただし、この本自体2005年に出版されたものですから情報は古くなっているかもしれません。しかし、商慣習、当時の馬産地の経済状況を知るうえで、非常に有用でした。

 例えば、古いと考えられる情報として、「大雑把にみて生産馬の40%前後がセリ市場に出場し、10%台が売却されています」(140ページ)という記述はあるのですが、2021年の1歳馬セールの上場頭数、売却頭数、売却率を見ると、それぞれ、2807頭、2171頭、77.3%(馬市.com参照https://umaichi.com/search/sale.html

)であり、全体の生産馬の数が約5000頭であるとすると、生産された馬の約40%がセリで売れている計算になります。

 ただし、2005年段階のセリでの上場頭数、売却頭数、売却率はそれぞれ、2183頭、650頭、29.8%なので、この本に書かれているように、当時はセリでの売却率は低かったということで間違いなさそうです。

 一方、いまにも通じるは話はあって、例えば、引退馬里親制度、養老牧場の話という部分はあります。ここでは、渡辺牧場において、ナイスネイチャが養老牧場において、飼育されているといった情報も書かれています。「基本的人権ならぬ、『基本的動物権の尊重』」(45ページ)という話は今の引退馬支援にも通じる理念だと思いますし、競走馬の引退後の生活、活動が尊重されるようになってほしいと私も思います。

 ほかにも、家族経営牧場の話や庭先取引の話もあり、馬産を経済学的に考察するうえでは非常に有用な本ではないかと考えられました。(個人的には、法律関係、契約関係の話が出てきてくれればうれしかったのですがそのような話はあまり多くありませんでした。)

 

 

 

(今日もどこかで馬は生まれるhttps://amzn.to/3JByBjg)という映画も引退馬支援、馬産を考えるうえで参考になるかもしれません。