千々和泰明著『戦争はいかに終結したか』を読みました。

千々和泰明著『戦争はいかに終結したか』(中公新書)を読みました。

ニュースで話題になっていたためこの人の本に関連して読んでみました。

www.asahi.com

そもそも、終戦記念日の時期ですので、戦争をどうやって終えるのかに興味がわいたため読んでみました。

 

 この本は、主な戦争の終結理由、終結過程を戦争の勝者の「根本的解決と妥協的和平のジレンマ」の観点から解説した本です。

 根本的解決というのは、戦争の敵に対して無条件降伏などをさせ、要求を通すという戦争の終結方法のことで、妥協的和平というのは、交戦戦力間の合理的な費用対効果の分析のもと戦争を終わらせることを選択するというものです。

 「根本的解決と妥協的和平のジレンマ」を言い換えると、根本的解決を求めることによって生じる「現在の犠牲」と妥協的和平を求めることによって発生する「将来の危険」のバランスから戦争を終結することを選択するというものです。

 そのため、この本では、例えば太平洋戦争は、日本による国際秩序の破壊と日本への本土上陸作戦によるアメリカ軍の犠牲とをはかりにかけ、天皇制の護持をあいまいにし日本での本土決戦を避けて戦争を終結させたのであると考察されています。

 しかし、この本では、このように「根本的解決と妥協的和平のジレンマ」の観点から戦争が終結したとしても、その後の歴史を見るとそのはかりにかけた結果の選択が失敗であったということがあることも説明されています。なので、この観点というものは「いい結果」を担保するものではないようです。

 昨今のウクライナ戦争に関しても、このような観点から戦争の終結を導き出してほしいとは思っているのですが、はたして、ロシアあるいはウクライナが自身が敗者であるとの分析をしているのだろうかそのような利益衡量は現在の段階で可能なのだろうかという疑問は尽きません。しかし、国際政治を考えることは平和を考えることですので、世界が平和になる方向でウクライナ戦争やこれまでの戦争を分析し、世界平和が達成されてほしいものです。