平成24年司法試験知的財産法

平成24年知的財産法を解いていきます。

 

知的財産法 第9版 (有斐閣アルマ > Specialized)

知的財産法 第9版 (有斐閣アルマ > Specialized)

 

 

 第一問

設問1

1.AはBに対して本件発明の特許権に基づいてB製品の製造販売・輸出の差し止めを主張しているため、検討する。

2.特許法101条4号以下によれば、特許が方法の発明についてされた場合における間接侵害について特許法100条1項2号の差し止め請求を行うことができるとされている。

(1)特許法101条4号によれば、方法の発明について特許が取られている場合に業としてその方法にのみ用いる物の生産、譲渡若しくは輸入又は譲渡の申出をする行為について間接侵害として差し止め請求をすることができるとされている。

(2)本件事案におけるAの特許権はクレームの解釈上特許法2条3項2号の方法の発明であると解される。

 その方法にのみ用いる物というのは特許権の侵害行為以外に使用することができないと考える物を指すが、本件事案におけるB製品は充電したい電池の種類に応じて 充電機能を選択することができるように設計されているものの、B製品は充電式でない電池を充電するために用いる以外に方法はないのであるから、Aの特許権を侵害する方法を実施することのみに用いられるものであるということができる。

 特許法101条上国内の実施を禁止するものであることから、輸出行為については差し止め請求をすることはできないとされる。しかし、本件事案において、Bは本件発明を用いたB製品を生産し販売することにより、特許法101条4号上禁止される生産、譲渡を行っているということができる。

 間接侵害が成立するためには、直接侵害がなければならないと解されるものの、本件発明の実施を行っているのは家庭内であり、直接侵害は存在していないということが言えそうであるものの、家庭内実施について直接侵害を認めないのは家庭内に法が介入するのは法政策上望ましくないからにすぎないためである。そのため、家庭内実施である場合、直接侵害が成立しなくとも、間接侵害を理由とする差し止め請求をすることができる。

2.したがって、AはBに対して、B製品の製造販売の差し止めを請求することができる。

設問2

1.AはCに対してCの部品の製造販売がAの特許権を侵害するとして、C部品の製造販売の差し止めを請求しようとしているが、このようなAのCに対する請求が認められるか検討する。

2.特許法101条4号は間接侵害についての差し止め請求しか認めていないが、再間接侵害について差し止め請求を認めていないのは、間接の間接侵害に対してまで差し止め請求をすることとなると、特許権侵害の成立範囲が過度に広範になり、差し止め請求を行う上で望ましくないと考えられているからである。

 本件事案において本件発明の直接の実施を行っているのは、ユーザーであること、Bはユーザーに対してB製品の販売を行うことにより間接侵害を行っていることから、CがB製品のために必要な部品であるC部品の製造販売を行う行為は間接侵害に対する間接侵害すなわち、再間接侵害に当たるため、特許法101条4号に規定されているその物を業として生産、譲渡を行うものに当たらない。

2.したがって、特許法101条4号の間接侵害は成立せず、AはCに対して差し止め請求を行うことができないということができる。

設問3

1.AはDに対して本件発明の実施を行っていることを理由として特許法100条1項に基づき差止請求を行っているが、このようなAの主張が認められるか検討する。

(1)直接侵害が成立するためには特許法68条によれば、業として発明の実施を行ったといえなければならない。Aの本件発明は充電式でない電池を充電する方法についての発明であるため、方法の発明であるということが言える。また、特許法2条3項2号によれば、方法の発明の実施を行ったといえるためにはその方法を使用したといえなければならない。本件事案においてDはB製品を用いて本件発明の実施を行っているといえる。

(2)これに対して、特許法上二重の利得の機会を得る必要はないとの考えや、過度に広範に特許権の行使を認めるのは適切でないと考えられていることから、特許権者又は特許権者から許諾を受けた者から適法に発明の実施に用いられるものを取得した場合特許権は消尽し、特許権を行使できなくなるとされる。また、方法の発明であっても、二重の利得の機会を与えることになることから、特許権は物に対してだけでなく方法の発明についても消尽するということが言える。

 本件事案においてDはAより販売の許諾を受けたBからB製品を買い受け使用することにより本件発明の実施をしていることから、特許権は消尽しているといえそうである。

(3)特許権者が、別段の意思表示を行い、特許権の行使を行うことが除外されていないことが商品に明記されている場合、特許権は消尽しないとされる。

 本件事案においてAはB製品の販売について、家庭内実施に限定しており、その旨がB製品に記載されていることから、別段の意思表示が行われたということができる。

 そのため、AはDに対して本件発明の実施を行っていることを理由として差し止め請求を行うことができる。

(4)特許法100条1項により差し止めることができる範囲は特許権の実施を差し止めるために必要な範囲に限られることから、AはDに対して本件発明の方法を差し止める範囲すなわち、B製品の使用の禁止しか求めることができないと解される。

2.したがって、AはDに対して特許法100条に基づきB製品の使用を差し止めることができる。

第2問

設問1

1.BはCに対し、著作権法112条1項に基づき差止請求を行うことが考えられるため検討する。

 

 楽曲αは、AとBが共同で作成したものであることから、著作権法2条1項12号の共同著作物に当たるということができる。また、CはBに無断で楽曲αが収録されたCレコードを販売していることから、著作権法」26条の2第1項の譲渡権を侵害したということができる。

 そのため、BはCに対して、著作権侵害を理由としてCレコードの販売を差し止めることを主張することができる。

 これに対して、Cは著作権法65条2項によれば、共同著作権の行使に当たり、共有著作権者の合意がなければならないとされているものの、著作権法65条3項によれば、正当な事由がなければ合意の成立を妨げることができないにもかかわらず、BはAを困らせることを目的として更新を拒絶しているため、著作権法65条3項の正当な事由がないと主張し著作権者の合意があったと主張することが考えられる。

 しかし、著作権法65条3項の正当な事由の主張は、意思表示を求める判決によってなされるべきであり、著作権法65条2項に対する抗弁として使用できないとされている。そのため、Cの反論は成り立たない。

2.したがって、BはCに対して、Cレコードの製造販売の差し止めを請求することができる。

設問2

1.Bはレコード店経営者Fに対して著作権法112条に基づき差止請求を行おうとしているため、検討する。

 先述の通りBは共同著作物である楽曲αの著作権者であり、Fは楽曲αの収録されたCレコードを販売することにより、公衆に向けて提供しているということができる。そのため、著作権法26条の2第1項の譲渡権を侵害しているということができる。 

 これに対して、FはBに二重の利得を与える機会を保障する必要のないこと、著作物の自由な流通を阻んではならないことから、著作権者又は、著作権者から許諾を受けた適法な権利者から著作物の譲渡を受けた場合、著作権は消尽するとされている。しかし、Cレコードを平成24年2月に販売した際Cは楽曲αの著作権の許諾を受けていないということができるため、著作権は消尽していないということができる。

2.そのため、Dは著作権の消尽を主張できず、BはDに対して販売の差し止めを請求することができる。

設問3

1.AはGに対して著作権法112条1項に基づき差止請求を行おうとしているため検討する。

 著作権法113条1項1号によれば、国内において頒布する目的をもって、輸入の時において国内で作成したならば著作者人格権著作権の侵害になるべき行為によって作成されたものを輸入する行為については著作権のみなし侵害となることが規定されている。DはX国においてのみ著作権が譲渡されているものであるにすぎないことから国内の著作権を有していない。そのため、Dが国内で販売したならばA及びBの著作権を侵害することになる。また、Gは日本でDレコードの販売をしていることから、国内において頒布することを目的としているということができ、さらに、X国からDレコードを輸入しているということができる。

 したがって、Gの行為は著作権法113条1項1号のみなし侵害に当たるということができる。

2.よって、AはGに対して著作権法112条1項に基づく差し止めを請求することができる。

設問4

1.AはHに対して著作権法113条1項1号のみなし侵害に該当することを理由として著作権法112条に基づく差し止めを主張しているため検討する。

 著作権法113条1項1号によれば、国内において頒布する目的をもって、輸入の時において国内で作成したとするならば著作者人格権著作権の侵害となるべき行為によって作成されたものを輸入する行為も著作権侵害になるとされている。

 本件事案においてHはE映画のDVDを輸入し販売していることから、国内で頒布する目的があったということができる。また、E映画については、D社から、許諾を受けてE社が作成しているものの、Dは日本において著作権を有していないことから輸入の時において国内で作成したならば複製権と著作権法28条によって認められた二次的著作物に対する減著作者の権利を害することになるため、国内で作成したとするならば著作権侵害に当たったということができる。にもかかわらず、HはE映画のDVDを輸入している。

2.そのため、AはHに対してみなし著作権侵害を理由として著作権法112条1項に基づき差止を請求することができる。

以上