司法試験平成28年度憲法

司法試験平成28年憲法の問題を解いてみました。

移動の自由を書いていないことと、プライバシー権の位置づけに難がある気がします。

他にも何かありましたら、コメント欄にお願いします

 

平成28年司法試験 論文過去問答案パーフェクト ぶんせき本

平成28年司法試験 論文過去問答案パーフェクト ぶんせき本

  • 作者: 辰已法律研究所,西口竜司,柏谷周希,原孝至
  • 出版社/メーカー: 辰已法律研究所
  • 発売日: 2017/04/01
  • メディア: 単行本
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設問1

第一.憲法13条により保護されたプライバシー権侵害

1憲法13条は生命、自由及び幸福追求に対する国民の利益は公共の福祉に反しない限り、最大限の尊重を必要とすると規定していることから、私的領域のプライバシーについては最大限保障されなければならないとされる。

2.性犯罪者継続監視法は、一定の性犯罪者の体内に埋設させたGPSから送信される位置情報を用いて、警察において継続監視を行おうとしているが、このような継続監視というものは、類型的に住居内などの私的領域内に存在する個人の位置情報という私的領域内のプライバシーを侵害するものである。そのため、性犯罪者継続監視法は憲法13条によって最大限に保障される私的領域内のプライバシーを制約するものであるといえる。

3憲法13条によって私的領域内のプライバシーは最大限に保障されていることから、このような私的領域内のプライバシーを制約する立法の合憲性は厳格に審査されなければならない。そのため、私的領域内のプライバシーを制約する立法が合憲であるといえるためにはそのような利益を制約するやむにやまれぬ必要性があり、それに対する必要最小限度の合理的手段が用いられていると認められなければならない。

4.性犯罪者継続監視法が制定されたのは心理学の専門家等によって一定の類型の性犯罪者は、心理的、生理的、病理的要因等により、同種の性犯罪を繰り返すおそれが大きく、処罰による特別予防効果に期待することが現実でないことが明らかになったことが理由とされているものの、これらの専門家の意見というものはそのような性犯罪者に再犯の恐れがあるという程度のものであり、具体的に個々の性犯罪者が再犯を発生させる高度の危険性があるということを認定するものではない。そのため、性犯罪者に対して、私的領域内のプライバシー侵害を行うやむにやまれぬ必要性があるとまでは認められない。また、性犯罪の再犯率というものも、他の犯罪類型に比べて特に高いものではないといえることから、専門家等のいう意見から性犯罪者が再販を発生させる高度の危険性を推認することは否定すべきであり、このことも継続監視を行うやむにやまれぬ必要性が無いことを裏付けている。

 また、性犯罪被害の防止ということであれば、警察による防犯パトロールの強化や、地域の保護者、学校への呼びかけ等でも対処可能であることから、このような継続監視は必要最小限度の制約を行うものではないということができる。

5.したがって、性犯罪者継続監視法は全体として違憲無効な立法であるということができる。

第二.憲法13条により保護された身体の利益の侵害

1憲法13条は、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については公共の福祉に反しない限り最大限に保障していることから、国民の生命及び自由に関わり、しかも、国民間の利害関係の調整の必要もない身体の利益については憲法13条によって最大限に保障されているということができる。

2.性犯罪者継続監視法はGPS監視対象者の体内に埋設することを予定しているが、この埋設方法というものは外科手術によって行われることが想定されているため、身体の完全性を害し、ひいては、憲法13条によって最大限に保障される身体の利益を侵害するということができる。

3.このように憲法13条によって保障される身体の利益というものは最大限保障されていることから、このような利益を侵害する性犯罪者継続監視法21条のGPSの埋設が合憲であるといえるためには、やむにやまれぬ必要性があり、その目的を達成するための手段も合理的かつ必要最小限度の者であると認められなければならない。

4.性犯罪者継続監視法21条がGPSの埋設を行うことを予定しているのは一定の性犯罪者というものは再犯のおそれも大きく、処罰による特別予防の効果に期待することが現実的でないことからGPSによる監視を行い対象者に禁止命令を発して犯罪の予防を行わなければならないからである。しかし、この性犯罪者の再犯のおそれというものは他の犯罪類型に比べて特に高いものではなく、具体的に個々の性犯罪者が再犯を発生させる高度の蓋然性が高いことを認めるものではないことから、そのような身体への侵襲を伴う手段をとるやむにやまれぬ必要性は存在しない。

 また、社会差別を惹起させる恐れがある手段であるとはいえども、身体への侵襲を伴わない小型のブレスレットによる手段でも目的の達成が可能である。そのため、性犯罪者継続監視法21条によるGPSを外科手術によって埋設する方法は憲法13条によって保障される身体の利益を侵害し違憲であるということができる。

設問2

第一.プライバシー権侵害を理由とする違憲主張

1Aの弁護人の主張の通り、確かに憲法13条によって私的領域内のプライバシーは最大限に保障されているということができる。しかし、公共の空間における個人の情報すなわち私的領域内の者ではないプライバシーの利益については収集、公開されないことによる利益を個人に独占させるのは適切でないため、個人間の利益調整を必要とする。よってプライバシー権憲法によって最大限には保障されない。

2.確かに性犯罪者継続監視法によって収集される情報というものは監視対象者の現在地という一見私的領域内以外の情報ではあるものの、この現在地情報というものは継続監視によって得られたものであり、類型的に、私的領域内のプライバシーを侵害する。

3.そのため、性犯罪者継続監視法が合憲であると認められるためには、そのような手段を用いるやむにやまれぬ必要性があり、その手段も合理的でありかつ必要最小限度の者であると認められなければならない。

4Aの弁護人はやむにやまれぬ必要性が無いことの理由として、専門家の意見も、他の類型の犯罪と比べて、性犯罪については同種の犯罪を繰り返すおそれは大きいとはいえないこと処罰による特別予防が期待できないとしても、具体的な個人の性犯罪者が再販を発生させることの高度の蓋然性を裏付けるものでないことを理由としている。しかし、対象となっている者は、心理的、生理的、病理的要因等により特定の性的衝動に対する抑制が適切に機能しにくい者に限られているため、検察官としては、そのような高度の蓋然性が認められるものに限定していることから、やむにやまれぬ必要な目的があると主張すると考えられる。しかし、この検察官の主張というものも、一定の性犯罪者の再犯の恐れを基礎づけるものに過ぎず、性犯罪の再犯の発生という具体的な高度の蓋然性を基礎づけるものではないため、やむにやまれぬ必要な目的であったと認めることはできない。

 また、このような性犯罪の防止の手段も弁護人の主張する通り防犯パトロール等によって達成できるため、継続監視も必要最小限度の合理的手段であるということはできない。

5.したがって性犯罪者継続監視法は全体として違憲無効な立法であるということができる。

第二.身体の利益の侵害の主張

1憲法13条によって身体の利益が最大限に保障されているということは弁護人の主張の通りである。

2.性犯罪者継続監視法21条は外科手術によって体内にGPSを埋設することを予定しているものの、この外科手術はいかなる健康上生活上の不利益も生じず、手術婚も外から認識できない程度に治癒するため憲法13条によって保障される身体の利益の侵害は発生しないとの検察官の主張が考えられるものの、この憲法13条によって保障される身体の利益というものは、身体の安全性、国家による身体の侵襲を許さない利益であることから、健康上の害や外見の変化が生じないとしても、憲法13条によって保障される身体の利益への制約が認められる。

3.この身体の利益は憲法13条によって最大限に保障されることから、性犯罪者継続監視法21条が合憲であると認められるためには、その目的を達成するやむにやまれぬ必要性があり、その目的達成の手段も必要最小限度の者であると認められなければならない。

4.性犯罪者継続監視法21条が外科手術によってGPSの設置を実施することを予定しているのは一定の性犯罪者は心理的、生理的、病理的要因によって再犯を発生させるおそれが大きいにもかかわらず、処罰によっては特別予防の効果が期待できないからであるものの、このような性犯罪の発生のおそれは存在していても、具体的に個々の性犯罪の発生を予期し、防止するものではない。そのため、性犯罪による被害の発生のおそれの除去という効果しかなく、このような法を実施するやむにやまれぬ必要性は存在しないということができる。

 また、このような監視の実施の手段としても、ブレスレットを腕につけることによっても実施することができることから、必要最小限度の手段であるということはできない。

5.したがってGPS監視のための外科手術を予定している性犯罪者継続監視法21条は憲法13条に反し無効である。

 

 

 

この答案を書いた後、憲法ガールⅡの7章のプライバシー権の位置づけを確認しました。憲法ガールの方では固有プライバシーとプライバシー外延情報に分けて考えているようでした。

わたしの答案ではこのプライバシー概念の位置づけを間違えているかもしれません。