司法試験平成28年商法

司法試験平成28年商法の問題を解きました。

今回は、請求権の選択ミス、問題文の特殊事情の不考慮などで時間を無駄にしたため、不十分な記載が多くなっているような気がします。

何かありましたらコメント欄にお願いします。

 

平成28年司法試験 論文過去問答案パーフェクト ぶんせき本

平成28年司法試験 論文過去問答案パーフェクト ぶんせき本

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設問1

小問(1)

1会社法3622項による取締役会を取締役によって開催させるためには、会社法366条によれば、取締役会の目的である事項を示して、取締役会の招集を請求しなければならないとされる。

 本件事案において、甲社代表取締役Bは臨時取締役会の一週間前に招集通知を発しているものの、取締役会の日時及び場所の記載をはあるものの、取締役会の目的について記載のないものであった。

 そのため、Bの取締役会開催手続には、会社法3662項違反の事実があるということができる。

2会社法3681項によれば、招集通知は各取締役に対して通知を発しなければならないとされていることから、取締役全員に対してしなければならないとされる。

 本件事案においてBは臨時取締役会の開催にあたり、Aの海外出張中にAを除いて招集通知が発せられているが、このことから、Bは取締役会の開催にあたって全員に招集通知を発していないといえる。

 そのため、Bの取締役会開催手続には、会社法3681項違反の事実があったということができる。

3.取締役会の開催手続に法令違反があった場合、その取締役会の効力は無効であるとされる。

 本件事案においてBの開催した臨時取締役会には会社法36623681項違反があるため、Bの開催した臨時取締役会における決議の効力は無効であり、A代表取締役から解任する旨の決議の効力は無効である。

小問(2)

1.まず、Bが定例取締役会においてAを再び解任した決議の効力について検討する。

 代表取締役を解任する旨の違法な取締役会の決議の後適法な同内容の取締役会決議がなされた場合、その決議の効力は有効となる。なぜなら、のちの適法な取締役会決議において確定的になったからである。

 本件事案において、Bは違法な取締役会決議の後、Aを含む各取締役及び監査役の全員が出席した定例取締役会において再度A代表取締役から解任する旨の議案を提出し可決を得ていることから、Aは定例会において、確定的に代表取締役を解職させられたということができる。

2.次に、Bは取締役会決議において、Aの報酬を月額20万円にまで減額させているが、このような報酬の減額が効力を有するか検討する。

 会社法3611項によれば、取締役の報酬は定款に定められていなければならないとされ、会社法3611項各号の内容についての記載がなければならないとされる。

 本件事案において甲社は取締役の報酬について、株主総会の決議によって定められた報酬等の最高限度額の範囲内で、取締役会の決議によって役職ごとに一定額が定められ、これに従って支払うことが決まっているため、会社法36111号の定款の定めがあるということができる。

3.しかし、この定款の定めがあったとしても、甲社の定款上取締役会の決議によって取締役の報酬を減額することができるとされていることから、甲社では取締役会によって報酬の減額を行うことはできるといえる。ただし、減額できるとしても、取締役の報酬に対する期待を保護する必要があるため、取締役の同意がなければ実際に減額することはできない。

 本件事案において、BAの報酬の減額を取締役会で可決させ、取締役としての報酬である50万円から20万円に減額させているが、この規定に従ってAの報酬を20万円に実際に減額するためにはAの同意がなければならないものの、本件事案においてAに同意を行っていない。

4.したがって定時取締役会の後のAの報酬は取締役としての月50万円であり、Aは甲社に対し月50万円の報酬を請求することができる。

設問2

(ここに長い記載ミスがあるが割愛する。ここで選択すべき条文を間違え、会社法429条の検討から入ってしまった。)

小問(1)

1会社法3392項によれば、株主総会決議によって解任された者は解任について正当な理由がない場合に会社に対して損害賠償請求を行うことができるとされる。

2.本件事案においてA株主総会決議によって解任されておりその解任の理由について特に正当な理由はない。

 そのため、Aは甲社に対して会社法3392項に基づいて、取締役としての任期8年分の報酬を損害として請求することができる。

小問(2)

1会社法8541項によれば、株式会社の役員の解任請求を行うためには、①役員の職務の執行について不正があったということと、②当該役員を解任する旨の株主総会が否決されたことまたは、会社法323条の効力により生じないことが認められなければならない。また、この請求をすることができる者は会社法85411号、2項によれば、総株主の議決権100分の3の議決権を有する株主であることが認められなければならない。

2.本件事案においてBは甲社株式の20%を有している株主であり、Bは解任請求をすることのできる地位にある。

 また、Aは甲社の多額の資金流用を行っていることから、Aは職務に際し不正の行為を行ったということもできる。

 しかし、Aを解任するための株主総会は開催されておらず、会社法323条により株主総会の効力が生じなかったという事情も本件では認められないため、B会社法8541項に基づいてAの解任を求めることはできない。

 しかし、このようにA株主総会の開催を阻止し続けると、Aの不正行為による責任追及ができなくなり、会社法8541項の目的を達成することができなくなることから、解任されるべき取締役が株主総会の開催を阻止するよう働きかけ、株主総会を一定期間開催させなかったことが認められる場合には会社法8541項を類推適用して解任の訴えを提起することができると考えられている。

 また、上記事情は本件事案においても認められることから、B会社法8541項類推適用によってAの解任の訴えを提起できる。

設問3

第一.甲社のDに対する損害賠償請求

1会社法4231項によれば、取締役が任務懈怠をし、会社に対して損害を生じさせた場合、会社は取締役に対し損害賠償請求をすることができる。

2会社法36246号によれば、取締役会設置会社の場合、内部統制システム構築義務が課せられており、この義務に違反した場合、またはこの内部統制システムがあるにもかかわらず、これに従った監視を行わず、会社に損害を与えた場合、会社の取締役は会社法4231項に基づく損害賠償義務を負う。

 本件事案において、Dは、Eに信頼を置くあまり本件通報を無視し、必要な調査を実施していないことから、Dには会社法36246号によって課された任務を懈怠していることが認められる。

3.しかし、内部統制システム構築義務が課されていても、発見困難な不正行為であったと認められる場合、会社法36246号の任務懈怠は認められないとされる。

 本件事案において、Eは水増しによる着服を行っているが、このような不正は甲社において生じたことがなかったものであった。そのため、Dが監視を怠ったことに合理的な理由があるといえそうである。

 しかし、Eの不正というものは、本件通報が行われ、コンプライアンス部門が動けば、2週間で容易に発見できるものであったことから、Dは監視を怠ったということができる。

4.したがってD会社法4231項により5000万円の損害賠償責任を負う。

第二.Cの責任

1会社法4231項の事情が認められた場合、会社の取締役に対する損害賠償請求が認められる。

2会社法3494項によれば、代表取締役は、会社の一切の行為をする権限を有するとされる。

 本件事案においてCコンプライアンスに関してDに任せており、Dが監視を怠った後速やかにコンプライアンス部門に調査を支持していることからCは任務を怠ったということはできない。

3.したがってC会社法4231項の責任を負わない。