令和元年司法試験行政法

司法試験行政法の答案を上げておきます。

司法試験の問題が公開されたときに解いたものですが、授業の関係で、ブログに挙げるのを遅らせていました。

おかしな点等があればコメントにお願いします。

 

行政法 第5版

行政法 第5版

 

 

 

設問1

1行政事件訴訟法上、ある行政処分が違法無効となるには、その処分に対する取消訴訟を提起して、その取消の主張が認められなければならないとされているため、ある行政処分に先行する行政処分の違法性を理由として、ある行政処分が違法無効であることを主張することはできないとされている。しかし、ある行政処分が先行する行政処分と一体となっている場合又は、その行政処分を取り消すための手続保障の機会が十分に与えられなかったといえる場合には、ある行政処分に先行する行政処分の違法性を主張して、ある行政処分が違法無効であることを主張できる。

2.本件権利取得裁決というものはB県収用委員会がC市の申請に対する処分として行ったものであり、B県のC市に対する本件事業認定処分を前提としている。そのため、本件権利取得裁決というものは本件事業認定と一体となった処分であるといえ、本件取消訴訟において、本件事業認定の違法を主張することができる。

3.これに対して、B県は本件事業認定は法261項に基づいて本件理由を付し抗告していることから、手続保障の機会が与えられていたことを主張すると考えられる。しかし、違法性の承継というものは、ある行政処分と先行する行政処分が一体となっているか、手続保障の機会が与えられていなかったことのどちらかの場合に認められるものであることから、B県の主張はAの主張を左右しない。

4.したがって、Aは本件取消訴訟において、本件事業認定の違法を主張することができる。

設問2

小問(1)

1行政事件訴訟法36条に基づいて無効確認訴訟を提起するためには、①処分性があること、②原告適格があること、③補充性が認められることの3つの要件を充足しているといえなければならない。

2.そのため、以下、無効確認訴訟の要件について検討する。

(1)処分性が認められるためには、法律に基づき、相手方の権利、義務地位に一方的に変動をもたらすものであると認められなければならない。

 本件権利取得裁決は法31項に基づいて、B県から、本件土地の所有者Aに対してなされており、この権利取得裁決がされたことによって本件土地の所有権をAからC市に一方的に移すことになるため、本件権利取得裁決は法律に基づき、相手方の権利を、一方的に変動させるものであるということができる。よって、本件権利取得裁決には処分性があるということができる。

(2)次に、行政事件訴訟法91項によれば、原告適格が認められるためには法律上の利益がなければならないとされる。

 本件事案におけるAは、本件権利取得裁決の相手方であることから、当然に本件権利取得裁決を取り消すことについて法律上の利益を有する。

(3)行政事件訴訟法36条によれば、無効確認訴訟を提起するためには裁決の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによっては目的を達することができないものであると認められなければならないとされる。

 本件事案において、Aは平成30511日になされた本件権利取得裁決の取消の訴えを約一年後の令和元年514日に提起していることから、もはや、取消訴訟などの他の抗告訴訟では争えない状態にあるということができる。これに対して、B県は国家賠償の請求ができることを反論として挙げるかもしれない。しかし、国家賠償によってはAの本件土地の所有権に関わる問題について解決することはできない。

 したがって、Aが本件権利取得裁決の無効を主張した段階では現在の法律関係によっては目的を達することができないものであるということができる。

3.したがって、AB県に対して無効確認訴訟を適法に提起することができる。

小問(2)

1.法203号によれば、事業認定を行うためには、事業計画が土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものであることが認められなければならないとされているものの、土地の適正かつ合理的内利用に寄与するか否かは、その土地の個別の状態、事業計画の適切性、などを個別に検討し、専門的判断を下さなければならないため、法203号の要件を充足するかについての判断には、B県知事に裁量が認められる。そのため、B県の判断が裁量権の範囲を逸脱し、社会通念上相当でない不合理な判断がされたということができる場合に限り違法であるということができる。

2C市は事業計画が適切であることの理由として、①「道路ネットワーク」の形成が必要であること、②「通行車の安全性の確保」が必要であること、③「地域の防災性の向上」が必要であることを挙げ、これらの目的を達するための事業計画として適切であることを主張している。しかし、本件理由には判断の前提となった事実について不合理な判断がされたこと、考慮すべき事項を考慮せずに不合理な判断をしていることの2点から、本件事業認定は違法であるということができる。

(1)B県知事は新たに本件道路が整備されると①~③の目的を達することができると主張している。B県やC市は平成元年に調査を行い、交通量を調査し、平成22年にも同様の調査を行っており、交通量は平成元年調査から約3分の1に減少すると判断している。しかし、C市の平成元年から平成22年の間の人口の減少というものは1割未満であり、平成22年調査の調査手法に誤りがあると考えられる。そのため、B県は前提となる事実についての判断を誤り、通過車両が増加し、良好な住環境が破壊されるような不合理な判断をB県が行ったということができる。

(2)B県知事は、新たに本件道路が整備されると①~③の目的を達することができると判断しているものの、自然環境保護について考慮に入れず不合理な判断をしているということができる。なぜなら、本件土地にある池は地下水が湧出した湧水によるものであり、また、本件土地周辺の工事によって井戸が枯れたことがあることから、本来本件土地の池や、本件土地周辺の井戸への影響について考慮し、これらへの悪影響の少ない道路を建設すべきである。にもかかわらず、これらの自然環境という重要な事項について考慮せず社会通念上不合理な判断をしているといえる。

3.したがって、B県は法203号の要件を満たさないにもかかわらず、その裁量判断を誤り違法な事業認定処分を行ったということができる。

 よって本件事業認定は違法である。

 

 

 

 

行政法の問題を上げるまでに、ハイローヤーで、今年の司法試験の解説が載っていました。気になる方は読んでください。